中国が札束にものを言わせてドミニカ共和国と国交樹立。割りを食う台湾

VViktor(CC0 Creative Commons)

 5月1日、中米カリブ海にあるドミニカ共和国が中国と国交樹立を発表し、台湾との外交関係の断交を決定した。  ドミニカ共和国とハイチが一つの島を二分しているが、今回の決定で島は台湾と外交関係をもつハイチと中国と外交関係を樹立したドミニカ共和国とでスポンサーも二つになった。

札束で相手を撫でる中国の中米投資

 台湾のジョセフ・ウー外交部長は「ドミニカ共和国と中国の外交関係樹立を遺憾に思う」と述べ、「台湾と外交関係にある国々を引き寄せる為にドル外交を展開する中国の決定は大いに問題にされるべきだ」と非難のコメントをしている。また、「台湾では肩を並べることのできない巨額のオファーをしておいた上で」、「発展の約束をし、それを満たすことのない(国)」として中国について批判した。(参照:「24Matins」)  一方のドミニカ共和国政府は「今回の一歩を踏み出す決定は充分に時間をかけて熟慮し、政治そして経済のひろい分野に亘って相談したもので、国家の為の必要性、潜在的可能性、将来の展望を考慮した上での結果である」と発表している。  中米の各国は、最近5年間で台湾から年間ベースにして平均5000万ドル(54億円)を発展の為の返済不要の支援金として受けている。それとは別に、例えば、ニカラグアやエル・サルバドールの場合は、大統領官邸や政府の建物の建設費用などは台湾が一切負担している。  しかし、中国は貿易取引量や開発支援金などで台湾ではとうてい及ばない規模の額を提供することから、相手国は必然的に中国との関係強化に向かうのである。そして、中国は「一つの中国」しか認めないことから、中国と外交を樹立させれば必然的に台湾とは断交せざるを得なくなるのである。  チャイナマネーの威力は凄まじく、中国はドミニカ共和国に対し今年4月に、まだ両国の外交も樹立していない中で5億3000万ペソ(11億円)を投資してアルミニウム生産工場を同国の自由貿易地区に建設した。この投資で両国の国交樹立は時間の問題となっていた。この投資によって、400人の直接雇用、1000人以上の間接雇用が期待されているという。貿易取引量においても両国の外交関係が樹立されていなかった昨年までで取引額は17億ドル(1840億円)を越え、中国はドミニカ共和国にとって2番目に貿易取引が多い国に成長している。(参照:「El Caribe」、「El Pais」)
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追い詰められる台湾
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