投資による利益獲得と社会貢献は両立する! 注目されつつある「インパクト投資」

Alexas_Fotos/pixabay

「インパクト投資」というものが知られてきた。社会によいインパクトを与える企業に対して投資を行い、社会的な課題を解決し、かつ、投資リターン獲得を両立させることを目標とするものである。一つの例として、貧困問題を解決するマイクロ・ファイナンス企業への投資が「インパクト投資」であると考えられる。「インパクト投資」は、投資先の環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance=企業統治)の取り組みを重視する「ESG投資」の一つだとも言われている。 「ESG投資」の一つではあるが、インパクト投資とESG投資はまた微妙に違う点もある。  ESG投資に関して言えば、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も、国内株式を対象にした「ESG指数」を選定し、企業が公開する情報をもとにESG要素を加味して銘柄を組み入れる株価指数を3つ(総合型2つ、特定のテーマ型1つ)採用し、それぞれの指数に連動するパッシブ運用を始めている。  GPIFが採用したESG指数は、指数会社がESGの観点から設けた基準に沿って評価が高かった銘柄を組み入れる「ポジティブ・スクリーニング」を用いている。(参照:GPIFのESG投資への取り組み)  しかし、実は、武器製造企業や不祥事を起こした企業等を投資先から除外する「ネガティブ・スクリーニング」の方がESG投資においては主流である。(参照:Global Sustainable Investments)  一方、「インパクト投資」においては、社会によいインパクトを与えようとする企業を選定して投資する「ポジティブ・スクリーニング」であり、GPIFのESG指数による投資はこちらに近い。「インパクト投資」のESG投資の中に占める割合は非常に低いものの、伸び率においては年率57%と、最も高い。

日本でも注目され始めている「インパクト投資」

 日本のESG投資の中では、企業のESGの課題に関して、株主として議決権行使する、また、議決権行使の前後において企業にエンゲージメント(対話)を行い、改善を促す「エンゲージメント・議決権行使」が最も高い55%の比率を占める。機関投資家が、企業との対話を促す「日本版スチュワードシップ・コード」を受け入れたことが主な要因であると考えられる。日本では、次に、投資プロセスにESG要素を組み入れて投資判断する「ESGインテグレーション」が大きな割合を占める。 「インパクト投資」は、日本のESG投資の中で、未だ、マージナルな(周辺的な)存在であるものの、成長という観点では非常に高く、徐々に市場では認知されてきている。野村証券、大和証券、楽天証券、マネックス証券など、複数の大手証券で販売されている「世界インパクト投資ファンド(愛称:Better World)」が「インパクト投資」を促進している。2016年、大和住銀投信投資顧問は、公募投資信託「世界インパクト投資ファンド」を設定した。
次のページ 
「インパクト投資ファンド」の投資先は?
1
2