介護職は失業のセーフティネットになるほど甘くない

介護 ここ近年は賃金や職場環境も少しずつ改善されてきたが、それでもまだまだ3Kの代表選手といったイメージが強い介護職。介護職の平均給与額は2012年度で27万6000円。手取りでもだいたい月20〜21万円だ。他の業種と比べてみても、まだまだ平均給与は低いものの、「頑張れば正社員にもなれる」ということもあって、なかなか就職できない若者が介護職を目指すケースは多い。  しかも、超高齢社会に突入した日本では、介護施設は右肩上がりに増えている。将来性のある職種とされながらも、相変わらず介護職の離職率は高く、入れ替わりが激しいのが現状。多くの介護施設が慢性的な人材不足に頭を悩ませている状態で、事業所を増やしたいのに人が集まらないためにできないといったケースも多いようだ。  そのため、職を失った40〜50代男性で再就職先を探すのが困難な人たちが介護職を目指すケースもここ近年、増えている。もちろん、高い志を持って介護の世界に入っていく人もいる一方、職が見つからない人にとって「最後の砦」ともなっているので、介護の現場では、様々な人が働いていると言っていいようだ。 「(私が入職した介護施設は)職員でさえも『どんな人でも受け入れる』ので、変な人がいっぱいいました」  こう、自著のあとがきに記しているのは、介護エッセイマンガ『49歳未経験 すっとこ介護はじめました!』の著者・八万介助氏(現在53歳)だ。  経済的に困窮した49歳のまんが家が必死に探してようやく見つけた仕事が、ある介護施設の認知症棟の介護ヘルパー。ヘルパー2級の資格は取得したものの、もちろん、介護職は未経験で50歳直前のオヤジ……。若い職員たちに虐げられながらも、3年間の実務経験を経て、見事、介護福祉士の資格を取得するまでの悪戦苦闘ぶりが描かれている。  実際に介護の現場で働いているからこそ描ける、介護職という仕事の実態や裏話などのほか、介護職のやりがいや魅力などが軽妙なタッチで描かれた介護エッセイマンガだ。 「右も左もわからない介護の世界に入ってみると、オヤジっていうだけでもう、理不尽なことを指示されたり罵声浴びせられたりイビられました。そういう人に限って、自分はまともに仕事していなかったりするんですけどね……。夜勤で私と2人しかいないのに、1人が途中で抜け出して遊びに行っちゃって、私1人にされてしまってパニックになったり……。仕事を押しつけられたりしたこともしょっちゅうで、ビックリしました」と、著者の八万介助氏。 「何をしでかすかわからないような人もいて、認知症の患者さんがひっきりなしにナースコールを鳴らすので、ボタンを手の届かないところに置いていたとか……。もちろん、施設内で大問題になりましたが、そういう人に限って『面の皮が厚くて、絶対に辞めないんだよ』って、先輩の職員に聞いたこともありました」とも。  介護職は離職率が高いと言われるが、そのことについては、こう言う。 「介護職を辞める人の99.9%は、人間関係が理由だと思います。もちろん、まっとうな人もいますが、いろんな人が介護職として働いているんですよね。そのなかで、私のようなオヤジは馴染むまではどうしてもイビられやすい(笑)。もし、40代の未経験者で介護職を目指そうと考えている人がいるのであれば、そのあたりはある程度は覚悟しておいたほうがいいですよ、とアドバイスしたいですね。ただ、イビられながらでも学ぶことは必ずあるので、1年我慢すればひと通り仕事を覚えられます。そうなると、周りの態度も変わってきて、きっと職場に馴染めるようになってくると思います」  実際に八万氏は入職して1年後にはひと通りの仕事を覚え、戦力として認められるようになった。次第に職場に馴染み始め、実務経験を3年積んだ後に介護福祉士の試験に合格。資格を取得することもできたのだ。まさに、“石の上にも三年”である。 「介護職を続けるコツは、どんなに辛くても最低1年は居続けることですかね。1年続けられれば3年続けられる。すると、介護福祉士の資格も取れますから。経験を積んで資格もあれば、転職も可能ですよね」(八万氏)  八万氏は介護福祉士の資格取得後、別の施設に転職した。未経験のときとはほとんどの施設から断られたというのに、今回の転職では比べようもないほど、苦労することなく転職ができたという。
49歳 未経験 すっとこ介護はじめました!

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「介護職っていうのは言われているほど誰でもできる仕事ではなく、決して甘くはありません。甘く考えている人は、ほとんど1年も経たずに辞めてしまいますから。ただ、前向きに一生懸命に取り組めば続けられる仕事だと思います。40代ともなると未経験でこの世界に入るにはいろいろ大変なことがありますが、仕事がないよりはマシですから(笑)。同年代で介護職を検討している人に言いたいのは、私でもできたんだから、“普通の人”であればできるはず、ということです。私もまだまだ勉強中で相変わらず今も転職先ではイビられてますが、みなさんも頑張って生き抜いてください!」(同) <八万介助/はちまんかいすけ> 別ペンネームで長年、学年誌やコミック誌、情報誌などでギャグ作品を中心に執筆。学年誌や女性誌などでイラストレーターとしても活躍。雑誌の休刊などが相次ぎ、漫画・イラストの仕事が減って困窮。2010年から、なんとか入職できた介護老人保健施設で働き始め、その後、正社員となる。2014年、介護福祉士の資格を取得した。ブログ『八万介助のすっとこ介護日記』 <取材/文 國尾一樹>
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介護施設のリアルを描いたエッセイコミック