元財務省勤務経験から見る「公文書改ざん」問題。東大・財務省・ハーバードを経た山口真由氏が語る

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山口真由氏

 昨年からさんざん国会を躍らせた森友問題は、ついに財務省による文書改ざんという第二幕を迎えた。この複雑怪奇な問題の中で、今回は、文書の改ざんに焦点を絞って、今後はどうしていくべきかのかについて、私の経験をベースに考えてみたい。

フォント違いすらも指摘された財務省時代

 財務官僚として働き始めてすぐに、「公文書」の重さというのは、身に染みて学ばされた。財務省に入省するとまず言われるのは、「呼ばれたらすぐにメモとペンを持って走れ」ということ。指示だろうと、電話だろうと、メモや応接録の形で記録し、上司へと情報伝達する。決済の過程で、上司は、そこに書かれた一言一句をなめるように読み、「てにをは」レベルまで細かく修正する。 「MS明朝の書体の中に、数文字MS P 明朝が混ざっている」という理由で、内容まで読んでもらえずに突き返された経験もある。細部まで神経を尖らせなくてはならないという文書に対する意識は、入省時から体で覚えさせられる。  もっとも、公文書になんでもかんでも書き込んでおく習慣は、なかったように思う。経緯に出てくる政治家の情報は、それが圧力や忖度を喚起させるようなものでなくとも、業務を運営するうえで大事なものではある。だが、これは公文書に残すのではなく、メモなどの形で記録しておくのが常識とされていた。

公文書を捨てたという不自然さ

 森友文書の問題の関連では、公文書の廃棄が問題となった。約1年前の国会で、森友学園と近畿財務局との間の交渉記録を 「面会等の記録につきましては、財務省の行政文書管理規則に基づきまして、その保存期間は一年未満とされてございます。具体的な廃棄時期につきましては、事案の終了とする取り扱いをしてございますので、本件につきましては、平成28年6月の売買契約締結をもって事案が終了しているということでございますので、即日かどうかは別にしましても、6月20日が終わったところで記録は廃棄しているということでございます」  と、当時の佐川理財局長が答弁し、それが大きな批判を巻き起こした。  この国会答弁自体は、確かにいかにも不自然だった。森友学園に売却した土地については、当初から地下1.5~3mの層にごみが埋まっていることが確認されていた。さらに、学園側が工事に着手したところ、新たに地下3.8mからごみが発見された。学園側は、2016年3月には、近畿財務局にこれを通知し、さらに損害賠償請求をちらつかせた。国側は、損害賠償請求はなんとしても避けたかったのだろう。だからこそ、ごみ撤去費用としていわゆる8億円の値引きと引換えに、国側は土地に関する瑕疵担保責任の一切を免除されて、売却契約締結以降は損害賠償請求を負わないとする異例の特約を入れ込んだ。つまり、破格の値引きと引き換えに、事後何があろうと文句を言わないという約束を、森友学園側は飲んだのだ。  こういういわくつきの土地について、その後、学園側が何かを言ってくる可能性に備えて、交渉記録を残しておきたいと思うのは、一般的な常識だろう。損害賠償請求をされれば、瑕疵担保責任を免除する特約と同時に、それを入れ込んだ背景たる交渉記録を示す。それは水戸黄門の印籠さながらの力を持つはずなのに、それをむざむざ廃棄するなんて何とも腑に落ちない。

公文書を雑に扱われないためには何が必要か?

 森友問題で明らかになったのは、公文書が何とも粗雑に扱われていたという事実だ。文書改ざんはもちろん許しがたい。しかし、この問題が国会で大きく取り上げられる以前の2015年6月頃にも、近畿財務局が学園に示す文書の一部を抜いていたというのだから、公文書の扱いに関する信頼は取り戻せそうにない。  ただ、私が知る限り、公文書がすぐに捨てられ、または、雑に扱われていたかというと、決してそうとも言えないように思う。公文書管理法が成立したのは2009年だが、それに遡ること、2000年には各省の次官が集まった各省庁事務連絡会議で、「行政文書の管理方策に関するガイドラインについて」という申合せが各省に伝達された。この別紙には、文書ごとの保存期間が明示され、これをもとにして各省での公文書の保管が強化された。  私の在職時は、毎年、「租税条約関連」「税制改正関連」など、長期保存の文書を明示して保管簿に登録し、基本的に1年から数年の間は、オフィスのキャビネットに保管する。それ以降、日常業務に使用しなくなったものは地下の書庫に保管、そして、1年に1度は文書課という文書管理の取りまとめ課から送られてくる文書管理簿に従って、ファイルの有無を確認していたという記憶だ。
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執念ともいえるアメリカの公文書管理
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