大山開山1300年。インバウンド需要を狙う地域活性化への挑戦

大山と恵みの水。撮影:豊 哲也

 米子鬼太郎空港に降り立ち、一路南東へと車を走らせると、正面に見事な山容を望むことができる。別名伯耆富士とも称される大山は標高1729m、東西に約35km、南北約30kmの威容を誇り、ブナ林に覆われた一帯は国立公園に指定されている。古くから山岳信仰の霊場とされ、718年(養老2年)に金蓮上人が弓で鹿を討ったつもりだったものは地蔵尊で、それを後悔した金蓮によって菩薩を祀った草庵を立てたことが大山寺の起源となっている。その後、大山寺は西日本における天台宗の高寺とされ、大山も民衆の入山が許されない僧たちの鍛錬の場となった。そういった歴史もあり、今でも山麓は神秘の空気に包まれている。  2018年は、その大山寺が開山してから1300年の節目の年になる。2017年6月には鳥取県や米子市、大山町が中心になって伯耆国「大山開山1300年祭」がスタート。2018年には2890万円の予算を計上し、「刀剣とたたら展」「山ガールサミット」「星空ウオッチング」「農と食のフェスタ」といったイベントを開催し、国内外の旅行客を呼び込みインバウンド需要を見込んでいる。

大山開山1300年祭 公式サイト

「米子の人間は新しいもの好きなので、ひとまずやってみようということになったんですよ」  そう笑いながら話すのは大山ブランド会幹事兼事務局長などを務める宇田川正樹氏。とりわけ強調するのが、この機会に「食」をどのように東京をはじめとする都市部にブランディングするのか、といったことだ。「他の地方では“大山”と書いても“だいせん”と読めない人が多い。また、お隣の出雲と比べてブランド力が弱いところがある。大山といえば水。その水の恵みで採れる農作物もお酒も、土地で育まれた牛肉や魚も美味しい。この機会に都市部のデパートと協力してアピールしていきたい」といい、百貨店における地産の食べ物の継続的な展開やオンラインショップでの売上を見込んでいる。  大山の水は、西日本最大級を誇るブナの森が育んだ伏流水で、大山の柔らかい地質によって育まれてきたものだ。実際、サントリーは大山の麓の日野郡江府町に「奥大山ブナの森工場」を2008年に開設。西日本エリアへ「天然水」を出荷しており、今年は工場から出荷する「天然水」に「大山開山1300年ラベル」をプリントし、応援している。  また、2018年3月には工場に近接する奥大山ブルーベリーファームで採れたベリーを使用した「奥大山のブルーベリーヨーグリーナ&サントリー天然水」を全国発売した。この新製品は、同社の「みらいのたねプロジェクト」で複数の工場スタッフによるチームが発案したものだ。メンバーの一人は「大山の水の美味しさを知ってもらい、長い視点で地方創生に貢献できれば」と話し、地域で開かれているイベントにも工場ぐるみで参加していると話す。  同社は、大山ブランド会の協賛企業に名を連ねているだけでなく、2017年にはシンガーソングライターの宇多田ヒカルを起用したCM「奥大山篇」を放映した。こうした姿勢には地元の白石祐治江府町長も「地元住民しか知らなかった沢に、たくさんの人が訪れている。大山の名前が全国に出る絶好の機会」と歓迎。「旅行に来た人が農産物や加工品を買って帰って頂くことや宿泊していくことにつなげたい」と意気込む。
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「地域活性化」をいかに定着させるか
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