韓国の若年層の8割も、平昌五輪の政治利用に反対を示す

 北朝鮮・金正恩第一書記が「新年の辞」で、平昌冬季五輪への参加意思があることを表明してから2週間、韓国政府の素早い対応もあり、南北間の閣僚級会談が行われ、次官級実務者会議が行われ、IOC(国際オリンピック委員会)では北朝鮮選手のオリンピックへの参加と合同入場が承認されるという急転直下の南北和解ムードが醸成されている。  今回の平昌冬季五輪への北朝鮮の参加が韓国政府にもたらす影響は大きい。  何よりも、北朝鮮にも「過去最悪の非人気大会」(1月21日労働新聞)と称され、国内外の観客動員に頭を悩ましていた韓国にとっては、何よりもの「目玉商品」が出来たことが大きい。  世界大会等における南北合同チームの結成や合同入場は過去にも何度かあるが、ことオリンピックでの実施となれば、国際的な関心も高まる。実際に韓国国内におけるオリンピック熱は、合同チームに対する話題を中心に急速に熱を帯びている。  また今回の一連の動きが、北朝鮮の核開発やICBMの試験発射等で極度の緊張状態にあった東アジア情勢の緩和にも大きな影響を与えている。  米・トランプ大統領は南北対話を歓迎するコメントを発表し、米韓合同軍事演習も現時点ではオリンピック・パラリンピック期間に限定されてはいるが、休止が決定されている。  また南北閣僚級会談では、平昌五輪への参加議題の他にも、南北間の諸問題について多角的に議論された。離散家族の再会や開城工団の再始動等、更なる南北融和への期待感を韓国政府は隠していない。  一方で北朝鮮側も、韓国政府との融和の先には米朝直接交渉を見据えており、国際的な制裁の中で自らの体制を維持するための道筋を作ろうとしている。  南北融和をより演出したい韓国政府や南北融和に危機感を募らす保守層に対する牽制をしながらも、南北融和に前向きな姿勢を崩してはいない。  朝鮮半島の緊張緩和を歓迎するムードが国際的に広がっているが、視点を変えればスポーツの祭典、平和の祭典であるオリンピックが、前述の様に、高度な政治活動に利用されているのではとの疑問も湧く。  今回のIOCの決定が国連の制裁決議に抵触するか否かの議論はさておき、本稿では南北合同チームの象徴となった、女子アイスホッケーチームの「犠牲」に焦点をあててみたい。
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女子アイスホッケー南北合同チーム結成で涙を飲む選手たち
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