[正社員⇒非正規]になった40代会社員が直面した現実

早期退職

「早期退職なんかに応募しなきゃよかった」

 非正規社員でも以前は正社員だった人は多い。現在、契約社員のビル管理人をしている谷川克行さん(仮名・41歳・年収270万円)は、元大手百貨店の正社員。37歳のとき、早期退職者募集に応募したが、「こんなことになるなら会社を辞めなきゃよかった」と未だに後悔の念に駆られている。 「すぐに見つかると思っていた次の仕事はなかなか決まらず、退職から9か月経ってようやく採用されたのが不動産の営業。一応、正社員でしたがここがブラック企業で、達成困難な厳しいノルマを課せられ、いつも上司から罵声を浴びていました。残業も毎日深夜まで及び、精神的に耐えられなくなって8か月で辞めてしまいました」  だが、短期間で辞めたこと、さらに年齢的な問題も加わり、次の職場は見つからなかったという。 「アルバイトをしながら1年で約80社に履歴書を送ったけど全滅。私には妻も子供もいますし、たとえ契約社員でも家族を養うほうが大事だと正社員は諦めました。もちろん、未練はありますけど」  1年半前から今の会社で働いているが、年収は百貨店時代の半分。当然、ボーナスも一切ない。 「家計的には早期退職金の1000万円で住宅ローンの残債の7割は返済できたし、妻も昨年から派遣社員として働いているので生活はできます。ただ、外食や旅行にはほとんど行けなくなりました」  また、自分が契約社員との負い目もあり、人付き合いも変化。たまに飲みに行くのは、同じ非正規雇用の社員や失業中の友人ばかり。それ以外の友人や百貨店時代の元同僚とは疎遠になったとか。 「今の自分をあまり人に見せたくないという思いはあります。最近も高校や大学ゼミの同窓会の案内が届きましたが参加は断りました。仕事を聞かれて、契約社員のビル管理人って胸を張って言えるほど強い人間ではないので……」 “非正規は恥ずかしい”という負の感情は、正社員だった時代に非正規社員に対して自身が抱いていた感情の裏返しなのか……。 <取材・文/HBO取材班>