国民投票迫るカタルーニャ独立問題。「政治家のエゴ」で犠牲にされる州民の将来
La Gaceta」)
そもそもの発端はこれだ。カタルーニャ州政府はスペインGDPの20%に貢献をしているのに中央政府からの交付金が少ないという不満が燻っていた。その解決の為にマス前州知事が知事の時に、ラホイ首相との交渉でカタルーニャの特異な存在を認めさせ、カタルーニャが徴収する税金の中央政府に収める比率を少なくして、残りの税収をカタルーニャ州の裁量で使いたい。それをラホイ首相に要求していたのだ。それが叶えられない場合は、カタルーニャの独立も検討せねばらならないという意思をラホイ首相に伝えていた。
それに対して、ラホイ首相は、国全体の発展を図るにはこれまでの税収体制の骨格は変更できないと答え、独立の為の投票は憲法違反になるので認められないと素っ気なく回答したという。
これはラホイ首相の失策だ。ラホイ首相のほうで税収についてもっと融通性を持たせ、住民投票についても違憲だと言ってそれを突っぱねるのではなく、それをする必要が無いように両者で政治交渉を進めて行くべきだった。しかし、ラホイ首相はもともと政治手腕に欠ける人物で、政治的駆け引きや策を練ることが不器用な政治家である。また、マス前州知事は高官官僚といった人物で政治指導者ではない。そのような両者が政治交渉をしても上手く行くはずがない。案の定、マス前州知事は住民投票を実施する方向に向かったのである。
カタルーニャの独立を目指す住民投票が10月1日に迫っているが、カタルーニャの経営者連合会のジュセップ・ボウ会長は同連合会の調査を基に「もし独立すればカタルーニャのGDPは16-20%後退し、失業率は42%まで上昇する」という懸念を示した。また、「(企業のカタルーニャからの)撤退が相次ぎ、カタルーニャは経済的崩壊に陥る」と表明した。
同氏の失業率42%というのは些か誇大過ぎる感もするが、政府のデ・ギンド経済相もGDPで25-30%の後退を指摘している。デ・ギンド経済相は経済省の経済専門の官僚としての経験を持ち、その後倒産したリーマン・ブラザーズのヨーロッパ代表でもあったことから、政治家の目ではなく投資家としての視点から経済を見ることが出来る人物である。(参照:「El Boletin」、「Las Provinicias」)
カタルーニャの今回の独立への動きは州民の生活に直接影響する経済を犠牲にして「政治家のエゴ」を優先させていることのお手本になる具体例であろう。
なにせ、カタルーニャ州民を対象にした世論調査でも、56%の州民が住民投票は無効で違法だと見做しているという結果が出ている。そして、8割以上の州民はカタルーニャの独立への動きが盛んになったをスペインのラホイ首相のせいだとしているのだ。(参照:「
カタルーニャ独立運動激化の発端
カタルーニャ独立のデメリットは小さくない
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