拡大&複雑化する「日本の香り市場」に挑む柔軟剤トップシェア企業の戦略

 艶やかなライトに豪華なランウェイステージ、それを取り囲む女性客。まるでどこかのファッションブランドの新作コレクションのような会場だが、これは衣類の香りづけ専用製品「レノアハピネス アロマジュエル」のリニューアル発表会だ。

左から香椎由宇、小島瑠璃子、優希美青

 舞台には同製品のCMにも出演する香椎由宇、小島瑠璃子、優希美青の3人が登場。ステージ中央にある洗濯機と香水瓶を模した入口から出てきた彼女たちは、ランウェイステージを颯爽と歩いていた。  なんとも華やかな空間だが、これこそが「レノアハピネス アロマジュエル」のブランドイメージを表した世界観なのだろう。「レノアハピネス」といえば、華やかな香りを持つ柔軟剤として真っ先に頭に浮かぶブランドだ。提供するP&Gは昨年会計年度において35%の市場シェアを獲得し、同社史上初めて、日本でのNo.1柔軟剤メーカーの地位を確立している。  そんな同社が自信をもって市場に投入するのが、香りづけ専門製品「レノアハピネス アロマジュエル」のリニューアル版である。「洗濯機に入れる香水」というキャッチコピーの同製品は通常の柔軟剤とは違い、あくまで香りづけに特化した製品で、もともと発売されていたラインナップにフルーティ系の新タイプを追加。さらに、それぞれの製品においても、“香水のような上質な香りが、しっかり香る”ように改良されているという。  こういった“上質な香りがしっかり長く続く”という製品がリリースされる背景には、我々日本人の香りに対する意識の変化があるという。P&Gアジアファブリックケア統括ディレクターの木葉慎介氏が話す。

P&Gアジアファブリックケア統括ディレクターの木葉慎介氏

「弊社が『レノアハピネス アロマジュエル』を最初に発売したのが2012年。それ以来、消費者ニーズの移り変わりを見てきましたが、最近では弊社のなかで『超感覚派』と呼ぶ、『上質でより長く、しっかり香るものが好き』というニーズが高まってきています。柔軟剤市場自体が伸びている面はあるのですが、それにしても、最初は汚れの落ち具合や柔らかく仕上がる『機能派』の製品が好まれていたんです。今もそういったニーズは一定数ありつつ、一方で香りに対するニーズもどんどん増え、消費者の方のなかで香りに対する探究心が強まっているのだと思います」  ドラッグストアの棚を見れば、そのニーズの高まりは一目瞭然だろう。柔軟剤をはじめ、今ではさまざまな香りを楽しめる洗濯付属品がところ狭しと並んでいる。それは我々日本人の特性も関係しているのだろう。木葉氏が続ける。 「恐らく文化的なものだと思うのですが、諸外国と比べても日本のお客様は匂いに対して敏感ですね。特に嫌な臭いとかに関しては、他の国々よりも、より敏感じゃないかなと。それに加えて、日本は市場が成熟しています。だから求められるのも複雑に成分を調合した深い香りを持つ製品になってきています」  最近では「スメル・ハラスメント」という言葉もあるように、周囲への影響を気にする人は多い。だからこそ、メーカー側も製品開発により真摯に取り組む必要があるという。 「日本の『香り市場』はさらに拡大していくと思いますし、香りの好きな方って、『今よりもっといい香りがあるんじゃないか』『さらに高級な製品ならもっといい香りがするんじゃないか』と、香りに対する探究心がすごくあるものなんです。我々も今はシェア1位という立場なので、他社とのシェアゲームをするより、市場全体をもっと伸ばしていくようなイノベーションを出していかなくてはと思っていますね」

左からルビーフローラルの香り(香椎由宇)、エメラルドブリーズの香り(小島瑠璃子)、アメジストバニラの香り(優希美青)

 複雑化する日本人の香りへのニーズに対して「より上質で、香りが長く続く製品」という、一つのアンサーを提示してきたP&G。香りへの欲望はとどまるところを知らないだけに、今後も同社の挑戦は続くのだろう。 <取材・文/HBO取材班 撮影/水野善之>