写真/IoSonoUnaFotoCamera
5月のG7に続き、またもや米国トランプ大統領がかき回した今回のG20。トランプ大統領の国際協調など全く無視した主張の結果、孤立だけが目についた。貿易問題しかり、地球温暖化問題しかりだ。敢えて孤立を厭わないということだろうが、その結果、中長期的な米国の国益が損なわれていることに気づかないようだ。これはトランプ政権が未だ政府高官の重要ポストを任命できず、その結果、米国の外交戦略が極めて粗雑になっている結果だ。そしてこの事態をほくそ笑んで見ているのが中国だ。
中国は本来、国有企業の貿易歪曲的な補助金や恣意的な輸入制限措置、高い関税など「保護主義のデパート」だ。巨大な中国市場を背景に、外国企業は差別的、不公平な競争条件に従わざるを得ない。各国は中国に是正の圧力をかけたいところだ。ところが米国のトランプ大統領が声高に保護主義的な発言を繰り返すことによって、各国の批判の矛先は米国に向わざるを得ない。その陰に隠れて中国への風圧は弱まってしまう。
例えば鉄鋼問題がそうだ。
問題の根源は中国による過剰生産だ。余剰の鉄鋼を大量に安値輸出している問題を是正しなければならないのは中国のはずだ。今回のG20首脳宣言でも早急な具体的な解決策の策定を関係国に求めているが、ねらいは中国に対して強い圧力をかけることだ。
ところがこれに対してトランプ政権が通商拡大法232条による輸入制限の発動を振りかざしているのだ。これは自国の安全保障上の理由に基づいて発動するもので、中国だけを対象とするのではなく、日欧も巻き添えを食らう恐れがある。EUはこれに激しく反発して、これが発動されれば即座に対抗措置を講ずるとしている。その結果、世界貿易は報復合戦に陥る恐れがある。
本来この問題は日米欧が結束して中国に対して圧力をかける問題である。それにもかかわらず、米国の鉄鋼輸入に対する保護主義的な手段に批判が集まり、日米欧の足並みが乱れているのだ。中国にとってトランプ政権の対応は願ってもない本質そらしで、これほどありがたいものはない。