広がる「地域新電力」。地元産発電はまるで電気の「道の駅」

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 日本のエネルギー市場は規制がなくなり自由化されました。昨年4月に電力が、今年4月には都市ガスが市場競争に移行し、エネルギー間の壁がなくなりました。電力小売市場には多くの300社以上の「新電力」が参入し、新たなサービス競争が始まっています。そこで安さ以外にも魅力の「地域新電力」に注目してみます。

地域おこしエネルギープロジェクト

■静岡市の仮想発電所(バーチャルパワープラント)  電力自由化の効果が現れている2つのプロジェクトを紹介しましょう。まず静岡市です。市内の小中学校80校に蓄電池を設置して一元的に管理し、「蓄電池を発電所のように運用」する「仮想発電所(バーチャルパワープラント)」を全国で初めて実用化するそうです。電気料金を削減できるだけでなく「災害時の非常用電源」としても使えるのです。東南海地震の地元ですからね。  電気料金は、需要が大きい昼間は高く、需要が小さい夜間は安いのです。仮想発電所は昼夜の価格差を利用した電力システムです。夜間に電気を蓄電池に貯めて、昼の需要ピーク時に放出するよう調節します。  運営を地元のエネルギー会社に委託しますが、自分たちの力で需要と供給をバランスさせながら電気代を節約する、格好いいですね。7年間で約9億円の経費削減が可能だそうです。その他、市内にあるごみ焼却発電の余剰電力を一括購入して市役所や病院など市内281の公共施設で使うという計画も進めています。 ■飛騨高山のバイオマス発電所  飛騨高山の事例です。「飛騨高山しぶきの湯バイオマス発電所」が5月1日に営業を開始しました。面積の92%が森林の街は間伐材など未利用の森林資源がたくさんあります。その森林資源に着目した地元企業が「小型木質ペレットガス化熱併給システム」をドイツから導入しました。年間126万kWhを発電し、120万kWhを中部電力に売電するそうです。売電収入を得るとともに発電の際に排出される「温熱を近くにある温浴施設に供給」するそうです。  発電所ができたことで、燃料の木質ペレットを生産する工場が建設されました。住民の雇用が増え所得の向上にもつながっているそうです。地域社会の中でお金が回るようになり地域経済の活性化にも役立っているそうです。過疎化に悩む地方の自治体には参考になりますね。このような地域おこしエネルギープロジェクトが全国の津々浦々で生まれています

電力自由化で消費者もいろいろな選択肢が

 小売会社の数が増えて電気料金やガス料金、サービス内容を比較ができるようになり、「1円でも安い電気を買おう」と契約先をスイッチングする人がふえましたが、地球温暖化に関心が高まり、料金とは違った視点で新電力を選択する消費者が増えてきています。 環境派の消費者にとっては、「割高でも好きな商品」を選びたい消費者も増えています。電気も同じです。割高でも再生エネルギーを活用した電気を買いたい、グリーン電力を購入して自分も温暖化防止と地域振興に役立ちたい、と考える消費者が増えてきています。  いまの自由化の仕組みの中では、大手の小売り会社はいろいろな電気をミックスして販売していますから、再生エネルギーに特定して電気を購入することはできません。その点、低炭素化時代に相応しいグリーンメニューをそろえているのが「地域新電力」です。地場の再生可能エネルギーを活用し産業を興し電気の小売り事業も展開しています。料金は火力発電中心の他新電力より少し割高ですが、地球環境を重視する消費者に支持されています。小売り事業に特化している会社もあります。
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地産電力はまるで「道の駅」
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