「ハイスコアガール」問題におけるスク・エニの“罪”――日本のマンガカルチャーにダメージを与えかねない
スクウェア・エニックスを刑事告訴した。10月には逆にスクウェア・エニックスが著作権侵害はなかったとSNKプレイモアに確認を求める民事訴訟を起こした。それから1か月半、事態は新たな局面を迎えた。
11月17日、大阪府警がスクエア・エニックスの関係者を大阪地検へ書類送検。驚いたのはその内容だった。編集・出版部門の担当者や役員だけでなく、作者の押切蓮介氏までも含めた16名が書類送検されたのだ。報道によると、押切氏ら6人については起訴を求める「厳重処分」の意見まで付けられたという。
元雑誌編集者で弁護士の高崎俊氏は今回の事態を「異例」だと受け止めた。
「刑事告訴がなされ、警察の捜査が行われた以上、警察から検察へと捜査書類が送られる『書類送検』自体は既定路線です。ここから検察の調べを経て、起訴・不起訴などが決定されるので、『即刑事裁判』というわけではありませんが、16名というのは多い印象ですし、作家本人が含まれているのには私個人としては驚きました。念のため、公益社団法人日本漫画家協会に確認を取ってみましたが、過去に著作権法違反でマンガ家本人を含んだ形で刑事裁判に至った例は報告されていない、ということでした」
報道では押切氏は「会社が許諾を取ってくれていると思った」と供述したとされている。マンガ家・すがやみつる氏も、以前当サイトの取材に対して、自身の作品に関する著作権関連の手続きは出版社が「やってくださいました」と明言している(http://hbol.jp/4955)。現場のマンガ編集者も「手続きなどの“雑務”を編集者がやるのは当たり前」と憤りを隠さない。
「報道からの推測になりますが、スクウェア・エニックスが『引用である』と主張していることや、SNKプレイモアが『単行本には、あたかも許諾したかのような表示まである。他社には許諾を得ているようで、ないがしろにされた』と主張していることからも、許諾を取っていなかったのは間違いないでしょう。『引用の解釈』で争うのは勝手にやれという話ですが、われわれの商売はマンガ家の先生方なしには成り立たない。こうしたゴタゴタにマンガ家を巻き込んだり、リスクを負わせてはいけないんです」
この編集者はさらにこう続ける。
「さらに許しがたいのはスク・エニが開き直った態度を取ったことで、書類送検にまで至ってしまったこと。成り行き次第ではいままで出版社が黙認してきた二次創作などにも法の網がかけられてしまう可能性があり、次代の描き手を萎縮させてしまうかもしれない。最初に許諾を取るなり、途中で謝るなり、どの段階でも手の打ちようはいくらでもあったはず。まだ書類送検の段階とはいえ、マンガ家に傷をつけた揚げ句、日本のマンガカルチャー全体に対してもダメージを与えかねない事態だということを自覚し、猛省していただきたい」
最後にこのマンガ編集者は「とっとと謝って、民事だけでも手打ちしちゃえばいいのに」と漏らした。当事者よりも周囲のほうが大事として捉えているこの”事件”が、刑事事件として立件されるかは検察の手にゆだねられた。
<取材・文/黒木貴啓>
何もかもが異例である。今年8月、SNKプレイモアが「キング・オブ・ファイターズ」など著作物のキャラクターを無断使用したとして、ハッシュタグ