自由党の選挙キャンペーンバナー。反イスラム主義を前面に押し出している(ヘルト・ウィルダース党首のツイッターより)
「トランプ旋風」が世界中に影響を及ぼす中、トランプ米大統領と似た傾向を持つ主張を展開して支持を伸ばしつつあるのが、「オルタ・ライト」(新右翼。オルトライトとも)と呼ばれる勢力だ。従前の右派よりも過激な主張を展開することから、「極右政党」と呼ばれることもある。
イギリスのEU離脱を決定づけた英国独立党、ルペン父娘が二代に渡って党首に就くフランスの国民戦線、ドイツのAfD(ドイツのための選択肢)、そしてオランダの自由党がその代表格である。彼らは移民排斥、EUからの離脱などの共通する主張を掲げ、欧州内でも連携している。
今年は欧州で国政選挙が立て続けに行われるが、オランダ下院選挙がその第一陣ということで、オルタ・ライト勢力が欧州内でどこまで伸びるのかを占う試金石と言われてきた。これらの勢力が政権を奪うほど伸長すれば、現在EUが対応に苦慮しつつも大量に受け入れている、シリアなどからの難民の受け入れ政策が大幅に変更される。
何百万人もの人びとが行き場を失うばかりでなく、EUの存続そのものすら危ぶまれるほど、歴史的な転換点となりうる。世界的注目を集めるに値する選挙だったのも当然といえよう。
今回のオランダ総選挙では、連立与党を主導する自由民主党が議席数を40から33に減らしたものの、同党のルッテ首相は「勝利宣言」。かたや、12議席から20議席にまで伸ばし、第五党から第二党になったにもかかわらず、自由党のウィルダース党首は敗北宣言を出した。どういうことなのだろうか。
オランダはもともと、オルタ・ライト陣営に対する拒否反応はやや大きかった。与党の自由民主党なども選挙前から「選挙結果にかかわらず、自由党とは連立政権を組織しない」と宣言。28もの政党が完全比例代表制の下で議席を争う選挙制度もあり、そもそも一政党が過半数を制する結果にはなりにくいため、選挙前から「どことどこが組むのか」ということが話題になる。そして、伝統的には比較第1党が連立交渉や組閣の主導権を握る。
その中で自由党は他の主要政党からソッポを向かれていたため、議席倍増以上で第1党に躍進することを勝利ラインとしていた彼らはその目標を達成できず、「敗北」を認めざるを得なかった。かたや自由民主党は議席を減らしたものの、比較第1党の座はかろうじて守り、連立政権交渉のイニシアチブを渡さずに済んだので、勝利と言っていい、ということなのだ。