介護業界で破綻が急増。老人ホームが倒産するとどうなる?

 2016年は老人福祉・介護事業の倒産が急増。調査開始以来過去最多を更新し話題になっている。その要因はともかく、利用者からすれば、突然の事業閉鎖はたまったものではない。特に、「終の棲家」として入居した老人ホームが閉鎖する場合には、必然的に多大な混乱が生じることになる。  そこで、今回は、実際に老人ホームが倒産する際に生じる問題と安全な老人ホームの見分け方を考えてみたい。

有料老人ホームが倒産すると追い出される?

 有料老人ホームの経営が行き詰まった場合、すぐに利用者が追い出されるかというと、必ずしもそうではない。これまでの事例では、他の事業者が事業譲渡を受け、サービス自体は、事業母体が変更されても継続されることが多かった。  もっとも、ここ最近は老人福祉・介護事業に対する事業者の参入意欲が弱まっている。事業の譲渡先が見つからず、破産手続が選択された場合はまさにサービス停止となる。利用者は食事や介護といった日常のサービスを受けられなくなるとともに、施設の利用権も消滅する。実際、事業者が一方的に施設の閉鎖を利用者に通知し、利用者が途方に暮れるケースもあるようだ。  もちろん、事業者や担当ケアマネージャーが(場合によっては行政も)、転居先となる施設を探してはくれる。それでも、希望の条件に近い施設への転居が可能かどうかは分からないし、新しい施設に入居する際に一時金などの用意が必要になる可能性もある。  利用者は非常に困った状況に置かれてしまうのだ。

既に支払った入居一時金の返還はどうなる?

 老人ホームが倒産し、別の老人ホームに転居する場合、問題となるのが入居時に支払う「入居一時金」の返還だ。入居一時金は施設によっても異なるが、100万円を超えることも珍しくない。家賃・利用料の先払い分であり、中途で退去する場合には、未消化分の一時金は返還されるべきものだ。  経営難で事業から撤退する以上、事業者による自主的な返還は到底期待できない。老人福祉法は、2006(平成18)年の改正により、最大500万円までの入居一時金について、銀行による連帯保証等の保全措置を、事業者に義務付けている。  この保全措置により、500万円までの入居一時金の返還は事実上保証されることは安心材料になる。ただし、保全義務の対象が、2006(平成18)年4月以降に設置された施設に限られている点に注意したい。現在、全施設に対して保全義務を課す動きはあるようだが、現時点では、古くから運営されている施設には保全義務が無い。そのような施設への入居を検討する際には、施設が自主的に保全措置を実行しているかどうかを確認すべきだろう。
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「終の棲家」の契約にあたって最低限知っておきたいこと
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