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【石原壮一郎の名言に訊け】~ニーチェ
Q:あいつは会社の制服を脱がしたらどんなカラダをしているのか、どんな顔で感じてどんな声を出すのか、どうされるのが好きなのか……。仕事中に女性社員をチラチラ見ながら、そんなエロい妄想が止まらない。もちろん、態度や言葉に出したりはしないし、仕事もちゃんとやっているつもりだ。こっそり個室で“欲望を解消する行為”をしても、たいして効果はない。ああ、こんな自分が嫌だ! 同僚の女性たちにも失礼だし、どうにかやめたい。いい方法があったら教えてくれ!(東京都・28歳・不動産管理)
A:まあずいぶん露骨というか赤裸々というか……。ここは意欲あふれるビジネスマンのみなさんにお読みいただいているサイトなんですから、おてやわらかにお願いします。でも、たしかに深刻な問題ですよね。あなたほど極端じゃなくても、エロい妄想という邪念に悩まされている人は少なくないでしょう。
残念ながら私たち人間には、沸き起こってくる感情を都合よくコントロールする機能は備わっていません。無理に押さえつけたら、エロいエネルギーが行き場をなくして犯罪行為に走るなど、なおさら厄介なことになりそうです。あなた自身やオフィスの平和のためにも、どうにかしてエネルギッシュな妄想欲を手なずけるしかありません。
こういう話のときに頼りになるのが、人間の業や生きる上での本質的な苦悩と格闘したニーチェです。彼の言葉から、気持ちを楽にできそうなヒントを探ってみましょう。たとえば、こんなことを言っています。
「自分を破壊する一歩手前の負荷が、自分を強くしてくれる」
妄想している分にはいいとして、あと一歩を踏み出してしまったら、たちまち破滅です。あなたはまさに「一歩手前の負荷」を自分にかけている状態。「妄想すればするほど強くなれるんだ」と自分に言い聞かせれば、罪悪感が薄れるでしょう。
「この世に存在する上で、最大の充実感と喜びを得る秘訣は、危険に生きることである」
この言葉も、エロくて危険な妄想をふくらませてしまう自分に、勇気と言い訳を与えてくれます。「自分はなんてエロい奴なんだ」と自己嫌悪を覚えたところで、事態が改善するどころか、さらにタチの悪い方向にエロさが熟成していくだけ。人よりたくさんの充実感と喜びを得ていると思って、強引に胸を張ってみてください。
「到達された自由のしるしは何か? もはや自分自身に対して恥じないこと」
ダメ押しは、この言葉。エロい妄想に精を出す自分自身への恥じらいを捨てれば、自由な境地に到達できるようです。たしかに、どんなにエロい妄想をしても何の恥じらいも感じない人になれたら、それはかなり自由な状態と言えるでしょう。
自分を強くしてくれて、最大の充実感と喜びを得ることができて、しかも自由に到達できる。ああ、エロい妄想というのはなんてありがたいのでしょう。ただ、ちゃんとした意味や意義があると知ったことによって、妄想する意欲や楽しさが削がれてしまう可能性は大いにあります。それはそれで結果オーライなので、とりあえず全力を尽くしてみてください。
【今回の大人メソッド】
すべてがそうとは言いませんが、人生には「無意味だから楽しい」「よくないことだからやりたくなる」という類の行為があります。その手に限って魅力的で、なかなかやめられません。強引に理屈をつけて「意味のある行為」にしてしまえば、急に色あせてヤル気がなくなるかも。ギャンブルのやりすぎや厄介な恋愛など、いろんな状況でお試しください。
【相談募集中!】ツイッターで石原壮一郎さんのアカウント(
@otonaryoku )に、簡単な相談内容を書いて呼びかけてください。
いしはら・そういちろう/フリーライター、コラムニスト。1963年三重県生まれ。月刊誌の編集者を経て、1993年に『大人養成講座』(扶桑社)でデビュー。以来、さまざまなメディアで活躍し、日本の大人シーンを牽引している。『
大人力検定』(文春文庫PLUS)、『大人の当たり前メソッド』(成美文庫)など著書多数。近年は地元の名物である伊勢うどんを精力的に応援。2013年には「伊勢うどん大使」に就任し、世界初の伊勢うどん本『
食べるパワースポット[伊勢うどん]全国制覇への道』(扶桑社)も上梓。最新刊は、定番の悩みにさまざまな賢人が答える画期的な一冊『
日本人の人生相談』(ワニブックス)
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