繁華街の「アジアンエステ」、店舗「売買」にまつわる謎の商慣習とは?

写真はイメージです photo by David Monniaux via Wikimedia Commons(CC BY-SA 3.0)

 繁華街でしばしば見かける「アジアンエステ」店。 「当店は風俗店ではありません」と書いた看板なりホームページがお約束となっているが、実際のところ「ハンドサービス」がある店も少なくない。  ちょっとした繁華街ならば、見かけないことはないほど乱立しているこのテの店だが、かつてアジアンエステがあった店舗は気がつくとまた別の名前のエステ店になっていた……なんてことはないだろうか? しかも、内装も電話番号も変わっていないなんて場合も少なくない。  あれはいったい何なのか?  都内でアジアンエステ店を開業していた吉林省出身のAさんは語る。 「ああ、あれは前のオーナーはそのままだけど摘発された後に違う店を装ってるか、前のオーナーが店を“売って”、新しい店のオーナーが看板を変えたかですね」  摘発された後に違う店を装うというのはわかるが、店を売る? 雑居ビルのワンフロアとはいえ、どう考えても賃貸物件にしか思えない。それともああしたエステ店は売買で取得している店が多いのか? 「ここでいう“売る”というのは、日本でいうところの“居抜き”のエステ店の営業権を譲渡するみたいな意味です。池袋の中国食品店などで配られている中国語のフリーペーパーに、エステ店の売買情報も掲載されているんです。『转让(轉譲)』と書かれていたら、たいていこうした居抜きの店舗売買です。駅チカや凄い人気店だった場合や内装がきれいな店は高いし、前オーナーが摘発されて急いで売られるなんてケースもあるし、物件の質も売りに出される理由はいろいろですけどね」

中国系の情報サイトに掲載されているマンション型アジアンエステ店轉譲の募集広告。オーナーが体を悪くしたので売りたいようだ

 なるほど、であれば名前が変わってもエステ店のままというのは頷ける。 「繁盛店が売りに出された場合は、店の電話番号も名前も女のコも引き継いで、オーナーだけ変わることもありますよ」  つまり、長年やっていると思ってた店も、人知れずオーナーが変わっているなんてこともあるのだ。もちろん、ここでいう「オーナー」とは店の経営者であって、通常の不動産取り引きで言われる「オーナーチェンジ」=賃借人はそのままで物件の所有者が所有権を売買するというのとは意味が異なる。言ってみればその逆で、物件の所有者がそのままで賃借人が店の内装などをそのままに他の賃借人に売るというような話なのだ。  しかし、それが本当ならば、物件の本当の所有者=大家に無断でそんな売買が行われていたとすれば問題ではないか?
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大家黙認の場合も
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