タイトルも作者も分からない「文庫X」の成功要因は、「出会い」の提供にあった?

「申し訳ありません。僕はこの本を、どう勧めたらいいのか分かりませんでした。どうやったら『面白い』『魅力的だ』と思ってもらえるのか思いつきませんでした。だからこうして、タイトルを隠して売ることに決めました」(原文ママ)  そんな書店員の想いが書き込まれた手製のブックカバー。本のタイトルも作者も出版社も分からない、そんな本が売れている。ビニール包装されていてパラパラと捲ることも出来ない。盛岡の「さわや書店フェザン店」のある書店員が、どうしてもこの一冊の本を読んでほしいという想いから考え出した販売方法、「文庫X(エックス)」だ。  ブックカバーには、書店員の想いのほか、この本がノンフィクションであること、500ページを超えること、価格が810円であること、そしてもし購入者が同じ本を持っていた場合は返品に応じることしか書かれていなかった。読書好きであれば、否が応でも興味を惹かれる。3000冊以上の本を読んできた書店員が、「この一冊をあなたにどうしても読んでほしい!」と言っている。そんな想いが、本を好きな客に伝播し、今では全国300以上もの書店で「文庫X」は売られている。
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文庫Xの成功要因は3つ
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