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「コグニティブ・コンピューティング(Cognitive Computing)」が、急速に普及しつつある。これは、コンピュータの処理の蓄積をふまえ、コンピュータ自体がコグニティブ(認知的)な判断をして、新たなアクションをし始めることを指す。コグニティブの普及は、ビジネスモデルを抜本的に変革するパワーを持ち、そのためには働き方の変革が欠かせないと、この分野の第一人者であるKPMGコンサルティングの林泰弘氏は語る。
「コグニティブにより、例えば、タクシー会社は、輸送サービス業ではなくなり、ホテルは宿泊業ではなくなるのです」と林氏は言う。いったい何を言っているのかと思う読者も多いに違いない。詳しく聞いてみた。
「これまで、タクシー会社は、お客さまを、ある地点から希望する地点まで、輸送することを生業としていました。しかし、そのお客さまがどのようなタイプのお客さまで、どこからどこへ行ったのかなどいう情報は、全く蓄積されていません。
それが、IoT(Internet of Things/もののインターネット)の普及により、どこの国のどこにお住まいで、最近何を買ったお客さまが、どこからどこへタクシーで移動したということが、瞬時にわかるようになります。加えて、コグニティブ・コンピューティングにより、その情報が蓄積され、例えば、お客さまのタイプ別に、どこからどこへ行く傾向が高いかを、コンピュータ自体が認知するようになり、その認知に基づいて、タクシーの配車や、タクシーサービスのキャンペーンを実施することができるようになるのです。
そして、その情報は、コグニティブを使っていない、他のサービスを提供する会社や、ある地域に出店している会社にとっては、のどから手が出るほどほしい情報です。それがわかれば、格段に確度の高いマーケティングができるからです。こうなると、もはや、タクシー会社は、輸送サービスの会社ではなく、マーケティング情報を提供する会社ということになるのです」
さらに林氏は、「想像してほしい」と語り、別の例も挙げる。