利根川が渇水でも東京都にはバックアップのダムがある
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利根川水系ダム貯水量の水位
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多摩川水系ダム貯水量の水位
必要以上の「過剰放流」が疑われる背景には別の理由もある。東京都が公開している利根川水系と多摩川水系の年間平均貯水量を比較してみると、利根川水系では貯水率が38%(6月28日現在、平年比で55%)だが、多摩川では80%(6月17日現在、平年比で103%)を維持し、多摩川水系の貯水量にはなんの心配もない。
実は「利根川は渇水、多摩川はたっぷり」という傾向はいつものこと。東京都は多摩川に確保した小河内(おごうち)ダムの水を温存し、先に利根川の水を使っているのだ。
そのことは「小河内ダムも貯める一辺倒ではなく、使うときは使っているが、基本的には先に利根川水系の水を使う」と、東京都水道局も認めている。その「使うとき」とは、利根川水系の渇水や水質事故が生じた時だけのことで、いわば、利根川水系8ダムのバックアップとなる存在が小河内ダムなのだ。
その利水容量は、たった一つで洪水期(梅雨や台風の時期など降水量が多く治水容量が増える時期)でも1億7987万立方メートルあり、東京都の独占水源となっている。
一方、利根川水系8ダムの利水容量は全部足しても3億4349万立方メートル(洪水期)で、これを1都5県で分け合う。だから「利根川水系渇水対策連絡協議会」が設置され東京都もメンバーに名を連ねてはいるが、実は小河内ダムがある東京都だけは「渇水」などどこ吹く風だというのが実情だ。
そんな中、さらなる利水容量を確保するために4600億円の税金を使って本体工事にかかっている八ッ場ダム(群馬県)の利水容量は、わずか2500万立方メートル(洪水期)。また、水資源機構が1800億円で栃木県に計画中の南摩ダム(現在ダム検証中)の利水容量も4500万立方メートル(洪水期)にすぎない。二つを足しても小河内ダム一つの4割にも満たない。小河内ダムを東京都がより有効活用すれば、いかようにも融通が可能だといえる。
「渇水」がアピールされる一方で、川の水が海に余分に流されている。そして、税金もムダに流されているのだ。
<取材・文/まさのあつこ>