一方で、県内を代表する観光地が大きな揺れに襲われた大分県では、大型商業施設においても観光客の減少による影響が深刻なものとなっている。
別府駅近くのトキハ百貨店では、観光客で賑わうはずの土産品売場はゴールデンウィーク中でもいつもより閑散としていた。
食品担当の店員は「今日の午前中はいくらかお土産を買うお客さまもいらっしゃいましたが…」とポツリ。ゴールデンウィークを見据えて大量に陳列された銘菓が悲しげに見えた。
別府市の百貨店にある地階・土産品売場。陳列された銘菓も悲しそうだ。
営業再開できた店舗、いつもの売場とは一変-影響は広範囲に
被災地で運良く被害を免れて早期に営業を再開できた商業施設でも、売場の様子は震災前とは一変した。
百貨店や大手雑貨店においても、急遽防災用品コーナーを設置、普段は売場の隅にある防災グッズの販売を売場の中央に移動させた店舗や、食器など震災時に必要とされる生活必需品の特売を行うことで、被災者の生活支援に努める店舗が多くあった。
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別府市の百貨店に設けられた「生活支援売場」。食器が割れてしまった家庭のために茶碗を格安で販売するコーナーも設けられた
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大手雑貨店に設置された防災用品コーナー(別府市、無印良品)
地震の影響は、地震による直接の被害が少なかった地域の商業施設でも大きかった。
地震の被害が大きかった熊本県は西日本有数の酪農県であり、さらに西日本各地にパンや納豆、豆腐などを出荷する工場が多く所在する。また、大分県でも被害を受けた農家もあるほか、道路の寸断により一時的に製品を出荷できなかったり、原材料が届かないために営業できない食品工場が複数あった。
そのため、九州各地のスーパーでは熊本地震の直後に牛乳、パン、納豆、豆腐などの品不足が発生。その影響は、遠く中国・四国地方の一部にも及び、普段は見かけない東日本のメーカーの牛乳やヨーグルトが店頭に並ぶ店もあった。
このうち、パンや乳製品については殆どの生産工場が5月までに営業を再開しており、このような状況は一時的なものとなったが、納豆や豆腐などの欠品は5月になっても解消されていない地域が多い。
一部商品の欠品は5月になっても続く。
熊本県が5月にまとめたところによると、熊本県内の農業被害は約1345億円にも上るという。熊本県が生産量全国1位を誇るスイカやトマトはこれから夏にかけて出荷の最盛期を迎えるため、震災が食卓に与える影響は長期化しそうだ。