新国立に匹敵する巨額事業――中学武道必修化でなぜ2500億円が必要なのか?

「安い」と思い込み費用の実態を認識していない武道関係者

 武道必修化の費用総額は、武道関係者さえもきちんと把握している人はほとんどいないように思います。私は柔道関係者と話す機会が多いのですが、その多くが武道必修化全体の費用を目先の用具の費用に矮小化して捉えている傾向があるように思います。即ち彼らは「剣道は防具が高額だが、柔道では生徒は柔道衣だけ、学校は畳だけ用意すればいいので安上がり」という論理を展開しがちです。武道専門誌で柔道関係者が授業で柔道の選択が多い理由について、「柔道衣の購入(安価)と、学校にある畳で授業が成立することが一因」と書いています(月刊武道 2015年8月号)。また、文部科学省のホームページ上でも「費用がかからないという理由からか、多くの学校が柔道を選択している」と説明されています。  お察しの方もいるかと思いますが、中学校武道必修化の実態は典型的な「ハコモノ行政」であり、費用の大部分は武道場整備費です。武道場を全国各地の中学校に建設する費用が「安い」わけがありません。  昨年、新国立競技場建設費問題が社会的に大揉めになった頃、講道館の機関誌に以下の記事がありました。新国立競技場の膨大な費用について、「国の借金が1000兆円(国民1人あたり800万円)もある我が国において、そのような設定が許されるのか、との疑問は当初からあった」と件の「1000兆円借金話」を引用し、論った後の文末で、武道場を「1日も早く全ての中学校に完備するよう、政治や行政には更なる努力を切望したい」と締めくくったのです(雑誌柔道 2015年9月号)。この記事を書いた方は、よもや新国立競技場建設費旧案2520億円と、全ての中学校に武道場が完備された場合の武道必修化の費用総額がほぼ同額になる可能性があることには気付いていないようです。  ちなみに剣道関係者からも「体育館の方が武道場より怪我が多く、武道場の設置が必要」と主張する声はあるものの、剣道は体育館の床で実施することに大きな支障はなく、武道場の設置はほぼ柔道の都合であることが明白です。
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費用総額を隠蔽し、国民の質問にも答えない文科省
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