「攻撃を目論んでいる顔」を見つけることができれば、未然にその計画を防ぐことができる可能性があります。「理性を失った顔」に気付くことができれば、防御態勢を取ったり、逃げたりすることができ、被害を最小限に抑えられる可能性が高まります。
もちろん、こうした危険表情だけに頼るのは危険です。本稿の趣旨ではないため割愛しますが、警護や警備を職務にしない方々にとっては、身の回りの危険度を正しく把握し、危険な状況に自分を置かない・状況を作り出さないという次善の策が最も大切です。危険表情の検知は最後の砦と考えた方がよいでしょう。警護や警備を職務とする方々にとっては、そうした予防策はもちろんのこと、「攻撃を目論んでいる顔」の検知から疑わしい人物を発見したときに、どんな質問をすれば当該人物の意図を把握できるか、という質問テクニックの向上や逮捕術・制圧方法も常に磨いておく必要があるでしょう。
危険を回避するには危険というものを知らなくてはならないのです。
(問題の解答・解説)
A:危険表情(攻撃を目論んでいる顔):眉が引き下がり、目が見開き、口の周りに力が入っています。この表情を見たら、防御態勢を取るか、その場から立ち去る必要があります。
B:緩い怒り、もしくは目が悪い人の顔の動き:眉が引き下がり、眉間にしわができています。これは怒りの場合もありますが、それほど怒りが強い場合ではないか、視力の悪い人が遠くの情報を見ようとしているときの顔の動きです。
C:苦痛:人が苦痛を感じているときの顔の動きです。
D:嫌悪:鼻のまわりにしわができています。これは嫌悪を感じているときの表情です。嫌悪感は消極的な感情ですので、この表情のちに暴力行為がなされる可能性は低いと考えられます。
参考文献
Ekman, P. (2009). Telling lies: Clues to deceit in the marketplace, politics, and marriage. New York: Norton.
Matsumoto, D., & Hwang, H. C. (2014). Facial signs of imminent aggression. Journal of Threat Assessment and Management.
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※すべての画像の人物は、表情モデルであり暴力犯罪とは関係ありません。
<文・清水建二(しみずけんじ)>
株式会社空気を読むを科学する研究所代表取締役。
1982年、東京生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業後、東京大学大学院でコミュニケーション学を学ぶ。学際情報学修士。 日本国内にいる数少ない認定FACS(Facial Action Cording System:顔面動作符号化システム)コーダーの一人。微表情読解に関する各種資格も保持している。20歳のときに巻き込まれた狂言誘拐事件をきっかけにウソや人の心の中に関心を持つ。現在、日本ではまだ浸透していない微表情・表情の魅力、実用例を広めるべく企業コンサルタント、微表情商品開発、セミナー等の活動をしている。