ショッピング丸勢(熊本市東区)
都市型震災だったがゆえに建物が損壊した商業施設も非常に多かった熊本地震。建物が大きく損壊した店舗においても、本震翌日の17日から店内の商品を店舗駐車場などで格安販売する店舗が多くあった。
熊本市東区の小さなスーパー「ショッピング丸勢」もその1つだった。
ショッピング丸勢は1962年に創業。30年ほど前に開店した現在の店舗は、大きな住宅団地に隣接するビルの下層階に入居していた。今どきのスーパーとしては非常にこじんまりとした規模で、半ば個人商店のような雰囲気。しかし、それ故に地域に密着した店づくりを行っており、地元住民にとって親しまれる店舗となっていた。
14日の前震において被害を受けた丸勢は、店内整備を行い15日から営業を再開。しかし、16日の本震でビルは大きく損壊し、17日からは店舗前での露店営業となった。益城町に隣接する東区では、先述のサンリブ健軍をはじめ、殆どのスーパーが大きな被害を受け営業を休止中。度重なる余震のなか、丸勢の露店には多くの客が並んだという。
しかし、丸勢が入居するビルは全壊と診断され、立ち入り禁止となった。丸勢は20日には露店での営業も休止し、丸勢は完全閉店することを決意したという。
丸勢が入居するビル。大きなクラックが痛々しい(熊本市東区)
5月に入り、東区や隣接する益城町でも少しずつ営業を再開する商業施設が増え始めた。しかし、最後まで被災者のために特売セールを行った老舗スーパーの閉店を惜しむ声は多い。
丸勢店頭には感謝の言葉が掲げられていた。再開したい意向もあるが未定だという
今回の震災では、コンビニエンスストアの営業再開の速さなど、ことさら大手流通企業の震災への対応がたびたびメディアで取り上げられた。
一方で、今回の震災は「都市型地震」であり、それゆえに多くの街の商店街が被災することとなった。
都市において日々の消費活動を支えているのは大手流通企業だけではない。
このように、地元の商店街、そして小さなスーパーマーケットや個人商店も、地域のために何ができるかを考え、必死に日常を取り戻すための、そして街全体を復興に導くための多大なる努力を行っていたことも忘れてはならない。
<取材・文・写真/都市商業研究所>
【都市商業研究所】
若手研究者で作る「商業」と「まちづくり」の研究団体。Webサイト「都商研ニュース」では、研究員の独自取材や各社のプレスリリースなどを基に、商業とまちづくりに興味がある人に対して「都市」と「商業」の動きを分かりやすく解説している。Twitterアカウントは「
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