この事実は、2015年にミシガン大学が行った大規模な調査でも裏付けられています(2)。このなかで、研究者は272名にアンケートを行い、すべての参加者の「仕事観」を2つに分類しました。
・適合派:「自分にピッタリの仕事がどこかにあるはずだ!」と思っているタイプ。「給料が安くても満足ができる仕事をしたい」と考えるため、転職率が高い。
・成長派:「どんな仕事でも続ければ好きになれるはずだ!」と思っているタイプ。「仕事は楽しくなくてもいいけど給料は欲しい」と考えるため、転職率は低い。 データによれば7割以上の人は「適合派」で、実際に自分が好きな仕事についていたとのこと。やはり世の中には、夢や情熱をベースに職を探す人が多いようです。
しかし、全員の収入や幸福度のデータを統計処理したところ、その結果は意外なものでした。両グループの主観的な幸福度と収入のレベルは、まったく同じだったのです。
要するに、好きなことを仕事にしようがしまいが、人生の幸せと社会的な成功にはまったく関係がありません。夢や情熱を追う前に、どんな仕事でもいいからまずは働けばいいわけです。 この結果を、研究者は次のように説明しています。
「適合派は自分の好きな職を探すのはうまい。しかし、実際にはどんな仕事にも好きになれない面が強いため、最終的には現実的なラインを探して妥協することになる」
自分の好きな仕事にこだわり続けることは、どんな仕事も好きになれない状態と表裏一体なわけですね。なんとも染み入る結論です。そして、好きな職業についても大して幸福感が上がらないのには、もうひとつ大きな理由があります。それは、本当に仕事に対する情熱や楽しさを左右するのは、「自分は人様のお役に立ててるか?」という感覚だからです。