通貨価値の下落は国家の衰退と密接に関係する
2014.10.07
ドル円が6年ぶりに109円台をつけ、円安状態へ突入した日本。ぐっちーさんはかねてより通貨価値の重要性について言及してきた。間違った円安歓迎ムードにいま一度、ぐっちーさんが疑問を投げかける。
(現役金融マン ぐっちー氏)
先日ある方に誘われて日銀の隣に併設されている貨幣博物館に行ってまいりました。東京に住んでいても、こういう場所にはなかなか行く機会がないもので、貴重な体験でした。興味深い展示があれこれ並んでいるのですが、お金の歴史というコーナーがあり、これがおもしろい。
詳細は書ききれませんが、7世紀の和同開珎から始まって、商品経済の発展に伴って織田信長が造った金貨や、さらに江戸幕府が発行した寛永通宝などに至るまでさまざまな貨幣が造られてきた歴史が明らかにされています。これを見ると、要するに通貨の価値下落とその時々の政権の権力失墜が相次いで起こっていることがわかります。
国家としての衰退が先で通貨価値が下がるのか、あるいは通貨価値が下がったために国家として成立し得なくなるのか、そのあたりはワタクシにはわかりませんが、いずれにせよ通貨価値の下落が国家の衰退と密接に関連していることがわかります。ここでは当然、通貨価値が下がることが問題になっているわけで、通貨価値が上がっている間に衰退した政府は日本にもないのです。
時の国家が衰退すれば、その国が発行する通貨の信認はなくなりますし、その逆も然りと言うわけです。江戸時代までは通貨に一定の金銀が含まれており、今のような「紙切れ」ではないですが、それでも国家の衰退が通貨の命運と共にあったということがわかります。
人類は第二次世界大戦を前後してハイパーインフレという通貨価値の大喪失という事態を体験。通貨価値を守ることの重要性を認識し、政府から独立した中央銀行をつくろう、ということになり、現在に至ります。つまり日本銀行という中央銀行の役割はこの通貨価値を守ることにある、ということです。
歴史が示すようにそうしなければ国家が維持できず、現代のようにありとあらゆるものを他の国から輸入している状況では、通貨価値が失われた瞬間にすべてのライフラインがストップして、国としての存続は難しくなる。もし日本円の信認がなくなって誰も受け取ってくれないとなれば日本は何一つ輸入できないのです。つまり、通貨価値が下がること(円安)は国家の存亡にかかわる事態で、中央銀行はその価値を守るために存在するという単純な話なのです。
⇒【後編】に続く https://hbol.jp/9293
【選者】現役金融マン ぐっちー氏
ウォール街で20年生きてきたノウハウからブログを執筆するアルファブロガー。金融と経済を中心としたオピニオンブログ「THE GUCCI POST」(http://sweetpoolside.jp/)を主宰している
通貨価値の下落は国家の衰退と密接に関係します
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