人は電気も水道もない山奥で暮らせるか? 25年間追い続けたドキュメンタリー映画

斉藤円華

田中さん夫婦(映画『ふたりの桃源郷』より) (C)山口放送

 山口県岩国市の山奥で自給自足の暮らしを続けた老夫婦。その姿を足掛け25年にわたり追い続けたドキュメンタリー映画『ふたりの桃源郷』(2016年、87分)が5月に公開される。撮影したのは地方テレビ局・山口放送のスタッフだ。

山奥の田畑を開墾、自給自足生活へ

「老夫婦は、取材に訪れると体の具合が悪くて伏せているような時でも喜んで迎えてくれる。それで、帰る時には門の外まで手を振って見送ってくれました。25年も通い続けた理由は、その時々で細かく変わる部分もありましたが、老夫婦のまっすぐな生き方に教わることが多かったからではないかと思います」

 監督で山口放送ディレクターの佐々木聰さんはこう話す。

 田中寅夫さんとフサコさんの夫婦は、電気も電話も水道もない山奥に暮らした。日本の敗戦後、南方から復員した寅夫さん。住んでいた大阪は焼け野原と化し、折しも農地改革が始まった。

「自分で食べるものは自分で作ろう」と、妻の実家に近い山奥の土地を手に入れ、田畑を開墾。3人の娘を育てるために一旦大阪で個人タクシーを営むが、寅夫さんが65歳となった1979年、再び山へと戻ったのだった。

 山口放送は、夫婦の暮らしを1991年から取材。佐々木さんは先輩ディレクターの後を継ぐ形で2002年から取材に入った。寅夫さんは2007年、フサコさんは2012年にそれぞれ93歳で亡くなるが、山奥の土地は末娘の夫婦が引き継ぎ、取材は現在も続いている。

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「自然体で暮らす姿に惹かれる」と大反響

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