実は、ケイマン以外にも名前の挙がっていないオフショア金融センターがある。
「近年、急激に法人数を増やしている米国のネバダ州やデラウエア州、ユタ州、ワイオミング州などです。米国政府は外国の金融機関に対しては情報公開を求めて違反者には巨額の制裁金を課すのに、自国内のこれらの州における情報公開には恐ろしいほど後ろ向きです」
これらを総合するとパナマ文書の隠された意図をひも解くことが可能だという。
「今回のパナマ文書が漏洩したきっかけは昨年8月に南ドイツ新聞に1通の匿名メールが寄せられたことと報じられていますが、常識的に考えてこれほどの情報リークを正義感に駆られた匿名の人物による単独行為とは考えられません。どこかの国家権力の意を受けた機関によるハッキングで強奪されたと考えるほうが自然。ただ、ハッキングした情報をそのまま流出させれば国際問題に発展するのは必至。だから、ジャーナリストを前面に出したのでしょう。
では、その国家権力とはどこか? 南ドイツ新聞が第一報を報じたことを考えれば、ドイツのBND(ドイツ連邦情報超)が濃厚でしょう。東西冷戦時代には対東ドイツ、対ソ連諜報活動の最前線で活動した諜報機関です。その目的は、習近平国家主席やプーチン大統領の名前がいち早くクローズアップされたことを考えると、想像に難くありません。ただ、その後すぐにワシントンDCにあるICIJに情報提供していることを考えると米国諜報機関の関与も考えられる。何より現時点で、米国の著名人のオフショアカンパニーが明るみになっていない。ICIJはNYタイムスやワシントンポスト、ウォールストリートジャーナルなど米国の主要報道機関に調査協力を呼び掛けていなかったという報道もある。米国メディアを排して、米国要人のオフショアカンパニーに関する調査を妨げた可能性があるわけです。米国のオフショア金融センターの名前が出てこないことを考えても、米国の関与のほうが濃厚でしょう」
ICIJは5月上旬にも調査を終えるとしている。その調査結果から、パナマ文書が持つ真の目的も明らかになるだろう。<取材・文/池垣完>