焼津×多摩美が仕掛ける「産官学連携」は、次なる街おこしのモデルになり得るか?

 静岡県焼津市。マグロ、カツオ、サバなどなじみ深い魚の日本有数の水揚げを誇る地方都市だ。その焼津がいま「焼津 Designing Table」という「産官学連携」の新しい形に挑戦している。 ※前回の記事はコチラ⇒http://hbol.jp/9064

焼津×多摩美は、次なる街おこしのモデルになり得るか。

 焼津市と多摩美術大学のPR協業「焼津 Designing Table」は4月に始動した。学年もバラバラ、専攻もそれぞれ違う学生たちが「焼津市ソーシャルデザイン」の講義に集った。北川氏が学生に課した課題は次の3つだった。 1.「魚河岸シャツを発想の原点にすること」 2.「4月中、最低限のインプットと焼津視察」 3.「年末、焼津市長へプレゼンテーション」 「焼津市からは、『街おこし』『やり方は自由』というお話をいただいていたんですが、企画を形にしていくには、一定の補助線は必要です。ふだんの仕事でもそうですが、今回は学生とともに取り組むプロジェクトということで、よりシンプルで明確な補助線を引こうと考えました」 多摩美術大学 魚河岸シャツという明確なテーマ、4月中にインプットと現地視察を行うというタスク、そして年内に事業提案を行うというゴール。目的を達成するために、チームで意識を共有する。ビジネスの現場においてもっとも大切な掟のひとつだ。 「2.のスケジューリングと3.の最終目標についてはふだんの仕事でも設定をしますが、1.の『魚河岸シャツ』というテーマについては今回学生と協業するということで、テーマの設定はいつもより慎重になりました。街おこしの場合、その街になじみのないもの、根づいていないものを外から持ち込んでも、まずうまくいきません」  ちなみに魚河岸シャツとはどんなものか、以下焼津市のHP から引用する。 『魚河岸シャツ」は、焼津の水産業者が家庭にある手ぬぐいを縫って作った「てぬぐいじゅばん」が起源と言われています。「手ぬぐいじゅばん」は、昭和初期には原型が存在したと言われています。「魚河岸シャツ」の名で、市内で売り出されたのが、今から30数年前。現在では、着心地の良さやファッション性の高さから、高齢者から若者、子どもまであらゆる世代の焼津市民に愛用されており、“焼津の夏”の風物詩となっています。』  テーマを設定するときに、北川氏は「魚河岸シャツを再デザインするのではない」と学生に念押しした。 「地元に定着して愛されているものを、外からやってきた学生が浅い理解のまま安易に自分なりのデザインで表現しようとしてしまうと、プロジェクトは間違いなく失敗します。そうではなく、あくまで発想の原点にする。焼津の価値を改めて考えるひとつの手がかりにする。学生は『自分の作りたいもの』『作りやすいもの』を優先してしまいがちなのですが、そうではなく焼津の魅力を再価値化し、情報発信しやすい形に設計する。結果、街も人も企業も学生もハッピーになるというプロセスを楽しみ、その課題解決の方法をスキルとして身に付けてもらう。それがこの授業/プロジェクトにおけるソーシャルデザインだと思っています」  当初は戸惑い気味だった学生たちも、次第にデザインの役割を理解していく。魚河岸シャツでも使われている文字をベースにした「魚河岸フォント」の開発やレンタルサイクルのデザイン化が進んだ。8月には「焼津さかなセンター」内に期間限定でのデザインブースを開設。魚河岸シャツの意匠を活かした包装紙や紙袋をサンプルとして発表。実際に使いたいという引き合いも来ているという。  ゴールは年内に行われるという焼津市長へのプレゼンテーション。9月に入って講義のレベルは一段上った。一般財団法人地域活性化センターの畠田千鶴参事、HAKUHODO DESIGN代表取締役で多摩美術大学の教授でもある永井一史氏、さらにマガジンハウスで「Local Network Magazine コロカル」の編集長をつとめる及川卓也氏など、地域おこしやデザインに詳しいゲストスピーカーを次々に招聘した。 「プレゼンの目標は『東京に焼津のアンテナショップ/情報発信基地をつくる』に定まりつつあります。しかし当然ながら、焼津市に都道府県レベルの予算があるわけではない。まずは焼津のみなさんに喜んでもらえるプランを作って盛り上がっていただけるかどうかが大切です。“情報発信基地”は単なるお土産を売っているショップの形だけとは限らないので、焼津の魅力が一番伝わるやり方を学生たちと楽しく議論していきたいと思っています」  近年、「アンテナショップブーム」とも言われるが、実は市町村が設立したアンテナショップは減少傾向にあり、2013年度は前年より4軒減って16軒となった。逆風とも思える状況下で、「焼津 Designing Table」はどうゴールへと歩を進めるのか。北川氏は「まだ僕にもわかりません。若者は短期間で急成長する生き物ですから」と笑う。プレゼンテーションは12月を予定している。 <取材・文/松浦達也> ― 焼津市×多摩美術大学。日本の産官学連携の未来【3】 ―
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