焼津市×多摩美術大学のプロジェクト「焼津 Designing Table」とは?
静岡県焼津市。マグロ、カツオ、サバなどなじみ深い魚の日本有数の水揚げを誇る地方都市だ。その焼津がいま「焼津 Designing Table」という「産官学連携」の新しい形に挑戦している。
通常「産官学連携」は、大学などの研究機関が開発した技術を企業が商品やサービスに活用し、その体制を国や自治体がバックアップするという座組みが多い。1990年代以降、企業は先の見えない研究開発よりも、自社の強みに特化した事業展開や事業連携に注力するようになった。大学等研究機関は、さまざまなPR手法を駆使しながら学生を確保し、その上で企業や自治体との連携を通じて研究体制の充実を図ろうとした。そして自治体は企業の誘致に加えて、特産品のブランディングなどによる自治体の認知向上をはかり、地元を活性化しようとした。
だが「焼津 Designing Table」は一般的な「産官学連携」とは趣を異にする。そもそも「産」業の開発や産業構造の変革が目的ではない。「官」の焼津市は人口14万人の中都市でPRによる地域活性化の効果がどの程度期待できるか測りきれないところもある。さらに「学」も研究機関というより、アートやデザイン領域が専門の多摩美術大学の学生を中心としたプロジェクト。しかも特定のサービスや商品ではなく、「焼津の活性化」自体が目的となっているという、ある種壮大な目論見だ。焼津市はこのプロジェクトに何を期待しているのか。
「東京から90分。産業の柱は水産業。人口14万人の中都市。こうした市のスペックや東京との距離感、そして地元にあるリソースが東京の若い美大生の目にどんなふうに映り、何を発信してくれるのか。焼津市の人口はこの数十年間、増え続けてきたが、ここ数年間は、全国の自治体と同様少しずつ減ってきています。また、高齢化も進むことから、基幹産業のひとつである漁業にしても後継者問題やブランド力強化などさまざまな課題を抱えています。そんななか、若者や県外の方の視点で焼津の魅力を掘り起こし、発信してもらう。われわれ焼津市民自身が地元の魅力や課題をもう一度捉え直す機会としても期待しています。成果次第では来年度以降も継続したい」(焼津市・中野弘道市長)
このプロジェクトに参加する顔ぶれ自体、一地方都市の活性化について、地元の中小企業だけでなく中央の大企業にも施策ごとに参加を呼びかけた。「学」も多摩美術大学という専門性の高い大学のチームが参画している。なぜこうした連携が可能となったか。キーマンは、プロジェクト全体を統括する多摩美術大学講師の北川佳孝氏だった。
『焼津市の街おこしに多摩美術大学が参賀した理由』に続く⇒https://hbol.jp/9064
<取材・文/松浦達也>
― 焼津市×多摩美術大学。日本の産官学連携の未来【1】 ―
産官学連携。焼津市の新たなる挑戦
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