世界騒然の「パナマ文書」、なぜ日本のメディアは本格的に報じないのか?

photo by geralt(CC0 Public Domain)

 世界中のメデイアが「パナマ文書」で大騒ぎをしている。  今更ながらではあるが、この騒ぎが一体どういうものかを振り返ってみよう。  この騒動の火付け役とも言える「南ドイツ新聞」(Süddeutsche Zeitung, 略称:SZ)が開設する” About the Panama Papers”という特設サイトによれば、昨年の8月に匿名の情報提供者がSZに接触にしてきたことがすべての発端だという。  この情報提供者から、SZは2.6テラバイトを超えるデータ受け取った。同じデータはワシントンに本部を置く国際調査報道ジャーナリスト連合(International Consortium of Investigative Journalists 略称:ICIJ)にも提供され、SZとICIJは昨年暮れから共同調査を開始したらしい。  その結果、現在までのところ、税金逃れのためにオフショアの金融機関を利用していた21万社以上の存在と、株主やオーナーたちの数万名分の名前が明らかとなった。  4月3日にICIJが公開した「パナマ文書:実力者たち」(Panama Papers The Power Players)と題された特設ページには、各国の元首級の人物や閣僚たちなど、50か国以上の政界の有力者たちの名前が並ぶ。  480万件を超えるEメールや200万件以上のPDFファイルで構成される「パナマ文書」が明らかにする、決して後ろ暗くないとは言い切れないカネの動きは、あまりにも広範囲で巨額だ。  すでに一部では「今世紀最大級の金融スキャンダル」との評価も出始めている。

アイスランド首相は辞任に追い込まれる羽目に

 たとえ海外のタックスヘイブンにおける資産運用が違法とは言い切れなくても、倫理的な問題は残る。額に汗水垂らしてコツコツに働き真面目に納税する善良な一般市民からすれば、「あまりにも不公正だ!」と、怒りをあらわにしたくもなる。実際にこうした怒りの声は世界中に広がっており、すでにアイスランドのシグムンドゥル・ダヴィード・グンラウグソン首相は、上記ICIJの特設サイトで名前を暴露されたことをきっかけに始まった大規模な抗議デモを受けて、辞任するまでに至った。  しかし日本のメディアはまだ騒がない。「パナマ文書とは何か?」「どの国のどんな政治家が名前を挙げられているか?」についての短い解説記事を出してはいるが、全国紙を見渡してみても本格的な報道が始まった形跡はない。
次のページ
日本メディアが大々的に報じない理由
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会