隙あらば仕事の“タダ乗り”を仕掛けてくる輩に、どう立ち向かう?

打合せ風景“個人的な相談”という名目で、しれっとタダ働きさせる人がいる。情報を引き出すだけ引き出して、対価を払わない。人脈をかすめとる。度重なるとウンザリする。“タダ乗り”を繰り返す輩に、どう対処すべきか。

 今回は、江戸時代に巨大財閥を築いた実在の人物・鴻池新六をモデルにした『天下、なんぼや』(吉川永青著/幻冬舎)から打開策を探りたい。主人公・新六は両親を早くに亡くし、食い扶持を稼ぐために、丁稚奉公に出る。苦労しながら、商いを広げ、酒蔵の主人から、海運業、大名貸へと出世していく。

「磨いた米の粉はな、おかきや団子になるんやで」

 造り酒屋で働き始めた主人公・新六が米を磨く場面。丁稚仲間が「米の大きさが六分になるんやもんなあ」とぼやくと、先輩格の金吾が「知らんのか。磨いた(残り四分の)米の粉はな、おかきや団子になるんやで」と教える。新六は、不要な米粉もきちんと商う奉公先に感銘を受け、熱心さに拍車がかかる。

 現代のビジネスに例えるなら、“米粉”はタダ働きに費やす時間であり、労力だ。例えば、人探しを頼まれ、あちこちに連絡とる。時間も手間もかかるが、自然と人脈は広がる。イベントの裏方なら、現場を仕切る経験値が上がる。気持ちを切り替えた先には、人脈や知見といった“団子”が待っているのだ。

「商いはな、どれも同じや。お客が嬉しいって思った分だけ、儲けが取れるんやで」

 手がけた酒を先輩杜氏に試飲してもらった新六。「この酒、いくらで売る」と問われ、謙遜のつもりで安値をつけると、“商売の基本がわかってない”とドヤされる。先輩曰く「商いはな、どれも同じや。お客が嬉しいって思った分だけ、儲けが取れるんやで」と言う。

 客を満足させる「質」があれば、高値でも売れる。これは現代にも通じる、商売の基本。だからこそ、自ら不適切な安売りをしてはいけないという教えでもある。報酬にもらうべき働きをしたと自負があるなら、泣き寝入りしない。“無料は初回限り”と宣言するなど、線を引くのもいい。

「何かあって悄気(しょげ)てるだけなら、商人なんかやってられませんわ」

 着々と商売を広げつつあった主人公・新六は大阪に分店を開く。しかし、ちょうどその頃、「大阪夏の陣」で、大阪は焼け野原になる。主人公・新六は“大阪の町を再興する案がある”と、徳川家康のもとに乗り込む。再考案と引き替えに、新たに店を開く土地を融通してもらう腹づもりだった。

 戦を終えた家康が最も望むのは、大阪の町を復興すること。新六は確信があったからこそ、バーターでの取引を持ちかけようとした。相手が欲しがるものを先に差し出し、引き替えとして要望を提示する。どんな相手でも、何を欲しがっているのか見抜くことができれば、臆さず交渉できるはずだ。

 誰しも、他人に都合良くこき使われるのは避けたいもの。前述したように、線の引き方はさまざまだ。徹底的に報酬にこだわるのも一案だし、目先の損には目をつぶる方法もある。いずれにしても、自分の性格に照らした選択が何よりの自衛策につながる。迷いやストレスを最小限に抑えることで、長続きしやすくもなるのだ。

<文/島影真奈美
―【仕事に効く時代小説】『天下、なんぼや』(吉川永青著/幻冬舎)―

<プロフィール>
しまかげ・まなみ/フリーのライター&編集。モテ・非モテ問題から資産運用まで幅広いジャンルを手がける。共著に『オンナの[建前⇔本音]翻訳辞典』シリーズ(扶桑社)。『定年後の暮らしとお金の基礎知識2014』(扶桑社)『レベル別冷え退治バイブル』(同)ほか、多数の書籍・ムックを手がける。12歳で司馬遼太郎の『新選組血風録』『燃えよ剣』にハマリ、全作品を読破。以来、藤沢周平に山田風太郎、岡本綺堂、隆慶一郎、浅田次郎、山本一力、宮部みゆき、朝井まかて、和田竜と新旧時代小説を読みあさる。書籍や雑誌、マンガの月間消費量は150冊以上。マンガ大賞選考委員でもある。


天下、なんぼや。

“脱武士”商人・鴻池新六の血湧き肉躍る一代記!

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