接客用AIロボットは人間を超えるのか?――国内企業500社が導入済み

ペッパー 店舗スタッフとして置かれるAIロボットを見る機会が増えた。昨年末、りそな銀行が一部の支店でコミュニケーションロボットSota(ソータ)を使った接客サービスの検証を行い、今年に入ってからヤマダ電機が接客ロボットNAVII(ナビー)の実証実験をスタートさせた。  AIロボットを象徴するのが、ソフトバンクが発売したAI(人工知能)を搭載する人型ロボット、Pepperだ。表情や声を読み取る独自のAI技術「感情エンジン」で、人の気持ちを数値化。人とコミュニケーションを繰り返すことで、会話のやり取りを学習する。2014 年 12 月にネスレ日本がPepperをコーヒーマシン売り場に導入し、顧客のニーズに応じて商品の提案ができるロボット店員として話題になった。今では全国のソフトバンクショップや、銀行の窓口、カフェなどに次々導入され、現在までに採用した企業は500社を超える。  AIロボットが接客業務と親和性が高いのはなぜか? Pepperの開発事業に携わる、ソフトバンクロボティクスの担当者に話を聞いた。 「一般向けのPepperはスマホに届くメッセージを読み上げたり、教育アプリで子どもと遊ぶなど、基本的なコミュニケーションの『媒介』となる機能が中心です。対して法人向けのPepperは受付などを行う接客アプリを搭載し、専用アプリで機能をカスタマイズすることでより業態に特化したサービスの提案を行うことができます」(プロダクト本部 取締役本部長 蓮実一隆氏)

エンタープライズ事業課、角田友香課長と、プロダクト本部、蓮実一隆取締役本部長

 たとえば、百貨店やショッピングセンターの呼びこみをPepperに任せると、ファミリー層の集客効果が上がるという。Pepperが子どもと”遊ぶ”間、解放された保護者は販売員の話に耳を傾けるようになるというのだ。 「家庭用水サーバーを展開する企業の例で言うと、百貨店での売り上げが約1.2倍になりました。従来の実演販売では、販売員が警戒されることも多かったのですが、Pepperを導入すると、お客様から関心を持って近づいてくださる傾向も見られます」(事業推進本部 エンタープライズ事業課課長・角田友香氏)  導入先がPepperをショップに常駐させるメリットはひとつではない。 「ひとつ目は初めて来店した顧客の年齢、性別、感情などに応じた商品の提案です。顔認識機能から特徴を判断し、年齢や性別の傾向に合う商品を選びます。ふたつ目は常連の顧客情報を覚えて行う、商品の購入の頻度や嗜好などに応じたよりキメの細かいサービスの提供です」(角田氏)  初対面の相手にも対応できる柔軟なコミュニケーションはインプット済み。顧客データの管理は当然ながらお手のものだ。顧客の表情や振る舞い、嗜好などさまざまなデータが蓄積されていく。一見客から常連までも見事にさばく。さながら、昔ながらの八百屋のような趣である。
次のページ
ロボットを人間に似せすぎると不気味さが増す?
1
2
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会