photo by 写遊 / PIXTA(ピクスタ)
日本国内で苦戦が続く着物業界。特に新品の着物市場では、老舗の呉服屋が次々に撤退していっている。そんな中、新品の取り扱いを続ける傍ら、中古の着物販売に着目し、成功しているのが、1924年創業、1961年会社設立の東京山喜である。
東京山喜は、1999年にリサイクルきものショップ「たんす屋」1号店を船橋にオープンして以来、全国に約125店の店舗を展開。中古着物や帯の買い取り・販売に加え、着物の着付け体験やレンタルなども行ない、同業界の不振をよそに業績を伸ばし続けている。
「新品の呉服屋が停滞したのは、変化の速い消費者ニーズに対応できていないから」と語るのは東京山喜の3代目代表取締役社長・中村健一氏だ。そうした従来型の呉服屋が抱える問題点を踏まえ、中村氏が取った対策とは何なのか。
東京山喜「たんす屋」社長・中村 健一氏
「老舗メーカーが生き残れない背景には、既存の卸売・小売業者への依存があります。メーカーから消費者までの工程が多いため、消費者のニーズが正確に把握できない。そのため、メーカーは過去に売れた商品やデザインに頼り、結果として消費者の求めるものを提供できず衰退した。そこで当社は、いち早く製造小売(※小売業が商品開発・製造・販売までを自社で行うこと。SPA=specialty stores of private label apparel)の業態に切り替えたんです」(中村氏)
製造から販売までを自社で一貫して行なうことで、消費者ニーズを正確に把握・対応しようと動いたことで、中村氏は気づいたことがあった。
「当たり前のように着る洋服と違い、和服は“着てみたいけど”さまざまな理由で買わないという潜在需要層がいることに気づいたんです。いわば”キモノスイッチ”みたいなもので、これをONにしてあげれば縮小したキモノ需要もまだ伸びていくのではないかと。そして、これは日本人だけでなく、海外の人にも同じようにあったんです」