「パラリンピックでは障がい者施設の作った食材を積極的に使っていこう、となっているんです。世界にない自然栽培の食材をオリンピックの食材に使っていこうって」
こう胸を張るのは、
『奇跡のリンゴ』で脚光を浴び、全国各地を飛び回って自然栽培農法を広める木村秋則さんだ。無肥料・無農薬を旨とする自然栽培では、使用農薬の問題も硝酸態チッソの心配もない。課題は、大会期間中に、数をそろえて安定供給できるかということだけだ。
愛知県豊田市でこのほど開かれた講演会で、木村さんは農業関係者らに訴えた。
「愛知県は北海道につぐ農業県。オリンピックの食材に『メイド・イン・アイチ』と表示されるような野菜をぜひ作ってほしい。世界一安全・安心な食材の生産地になってほしい」
2020年はもうすぐだ。基準値の甘さを不安視されている日本は、同時に「自然栽培」の分野でアピールできる可能性も秘めている。
取材・文/田中裕司(ノンフィクションライター。著書に
『希望のイチゴ~最難関の無農薬・無肥料栽培に挑む~』など)