バンコクの北朝鮮レストランは外観は特に目立った装飾はなく、店内はむしろ質素すぎるほどであった。席数も4人がけのテーブルが12卓程度で、そもそもたくさんの客を捌けるような店ではなかった。ランチタイムからディナーまで通しで営業しており、毎日20時にショーがスタートする。メニューは焼肉のようなものや冷麺、キムチなど様々なものがあったが、どれも200バーツ(約670円)以上の料金設定で、タイの物価感覚からすると高いという印象を受けた。
バンコクの北朝鮮レストランは地味な内装であった
敬虔な仏教徒が多いタイでは仏教に絡んだ重要な祝日は酒類の販売が禁止されている。飲食店でもバーや居酒屋は閉店になることが多い。この「PYONGYANG A RI RANG RESTAURANT」はそんなことにお構いなしといった感じで、禁酒日にもアルコールを提供していた。店員にタイ人はいないので、その点を知らなかった可能性もあるが、会話はすべて朝鮮語(韓国語)か英語になり、相手側もネイティブでないこともあって、その点の話をちゃんと聞くことはできなかった。
客の大半は土地柄もあって日本人が多いように見受けられた。取材当日は我々取材班のほかには、日本人と韓国人のグループがそれぞれ4人組と2人組の合計5組。
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キムチの味はよかったが、200バーツ(約670円)もした
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鉄板焼きは決していい肉とは言えず、やや硬さを感じた
韓国政府が自粛を促している背景には、資金源となっていること以外にも、韓国人が北朝鮮レストランの店員に韓国政府のゴシップ的な噂話をすることを恐れているからだという話もある。それでも韓国人がやってくるのは、いわゆる古き良き朝鮮女性と話せるからだそうだ。現代の韓国女性と違って、話に耳を傾けてくれるのが韓国人男性には嬉しいらしい。ただ、話を聞くのは情報収集をしているからだという説もある。
古き好き……といった感じは日本人にもどことなく昭和の雰囲気を感じさせるようないい意味での野暮ったさは確かにあった。筆者が給仕にお礼を言ったときに「カムサハムニダ(ありがとう)」と「サランヘヨ(愛している)」を間違ったときの反応は純粋に恥ずかしがっているようでかわいらしかった。
昭和の雰囲気もあって、郷愁を誘う
20時に始まるショーは、一応喜び組によるものだとされる。一応というのは、日本の報道写真で見るようなすらっとした女性ではなく、昭和チックなスタイルの女性ばかりだからだ。取材日にフロアにいた女性店員は4人おり、その全員がショー要員であった。朝鮮の伝統服であるチマチョゴリを着たり、古くさいドレスに着替えたりしながら、甲高い声で歌うショーが始まる。
所々で日本の演歌が日本語で歌われることもあれば、琴のような楽器を演奏したり、ギターやドラムなどでバンドを始めたりと一生懸命ショーを演じていた。これもまた、どこか昭和のような雰囲気があって、それはそれでおもしろいものがあった。
そして、たったの14人だけだった客だが、どのグループもショーが終わるとすぐに退出していった。
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