日銀のマイナス金利導入で市場金利が大きく低下しており、国債より少しでも高い利回りを見込める社債の需要が高まることが予想される。そのため、法人企業には、低コストで長期の資金を調達できるメリットができたこともあり、社債発行の動きが活発化してきた。
2016年2月19日、JR西日本が、同社の社債としては償還期限が最長となる40年の社債の発行を決定した。40年債は、同日時点、民間企業による国内公募普通社債としては最長年限である。機関投資家向けに、100億円の社債を発行した。利率は1.575%となる。
社債を発行する企業の低コストの調達メリットはわかるが、買い手はいるのか? JR西日本のケースでは、発行額の3倍弱の需要があったと言われる。
同様に、大和証券グループ本社は償還までの期間が7年と10年の社債を合計240億円発行した。同社としてはこれまで最も低い利率で、7年債で0.4%、10年債で0.56%となった。他にも、最近のニュースでは、味の素、ヤマトホールディングス、兼松、東北電力、北陸電力などによる低金利の社債発行が報道されている。
また、企業が借入期間数か月の資金を調達するために発行する無担保の約束手形、コマーシャルペーパー(CP)というものがある。企業は、決済業務を担う証券保管振替機構(ほふり)が運営する「短期社債振替システム」を経由してCPを発行することが多い。「短期社債振替システム」の情報システムは、マイナス金利の取引に対応していなかったが、システムの改修をおこない、3月21日からマイナス金利での資金調達が可能になる。借りた金額よりも少ない金額を返済するので、CPによる資金調達は企業にとっては有利である。
企業にとってマイナス金利は社債やCP発行においては、上記のようなメリットがあるのだ。とはいえ、投資家が満足する発行利回りにするには、国債に対する上乗せ金利を大幅に拡大する必要があるというもの事実であり、法人にとっても完全有利とは言えない。他のアセットクラスと比較して、相対的に、低金利の社債に魅力があるかどうかが、需給を決めると言えよう。