注目される「ベトナム不動産投資」。果たして言われるほどうまみがあるのか?
ベトナムでも内装や家具はオーナーが新調し、付加価値を上げる必要がある。それを合わせると初期投資はあまりにも高額だ。6000万円の物件は167㎡の3ベッドルームだそうだ。賃貸だと回収に何年かかるのだろうか。日本人が払う家賃の平均は商社や銀行の駐在員で3500米ドル~、ほかは単身者で1000ドル、家族帯同で2000ドルが相場だという。3500ドルを約40万円とした場合、単純計算で6000万÷40万=150か月、つまり12年以上もかかってしまう。それであればキャピタルゲインを狙ったほうがいいのではないか。そう訊くと山中氏も頭をひねってしまう。
「今までベトナムには不動産投資というものがなかったですからね。売買にしても中古不動産市場もないような国ですから、まったくの未知数です。富裕層のベトナム人は日本の土地やマンションの購入を考えている人がいるくらいですので、賃貸にしても私は儲かるようには感じません。1棟全部を所有してアパートを運営しているオーナーは儲かってますが……」
そもそも社会主義国のベトナムでは不動産売買は所有権の売買というよりも長期使用権の売買になる。そのため、中国のように国の計画で立ち退きを命じられることもある。また、不動産売買ではレッドノートというものが発行される。これは土地使用権証明書および家屋所有権証明書で、これが発行されないとただ金を払っただけでなんの権利も持っていないことになってしまう。恐いのは、こういった常識も持ち合わせていない日本人不動産仲介業者もいることだ。
「日本人はコンサルに相談することが多く、信用しやすいです。コンサルは理論武装しているように見えて、実はなにも知らない人が多い。ある投資家は仲介した会社から『施工会社がベトナムナンバー2だから安心』と意味不明なことを言われたそうですよ。ベトナムで不動産投資によって儲けようとするのは正直難しいです。ベトナムの日系企業のほとんどが製造業で、最近は日本人駐在員の住宅補助の予算も厳しくなっています。分譲賃貸にした場合、予算に合わず、借り手がつかないで無人のままになるパターンも増えていますよ」
ベトナムは法律やレギュレーション変更が頻繁にある。そういった法整備をしっかりし、外資誘致を政府が真剣に考えない限り、投資は引き続き難しいと山中氏は考える。
「そんな状態のまま建設が進んでいるので、いずれバブル崩壊となるでしょう。そう考えると、今は外貨をベトナム・ドンに両替して、定期預金にした方が利回りがいいような気がします。5年前は14%で、今は半分ぐらいですし、再度、外貨に戻すときに為替差損と両替手数料がかかることを承知するという前提ですけれども」
もし仮にベトナムでなんらかの投資に成功したとしても、その利益をベトナムから日本など国外へ送金するにはいろいろな規制がある。結局ベトナムへの投資自体が一筋縄ではいかないので、ベトナム不動産投資はまだ様子見の段階なのかもしれない。
-
-
ハノイにあるロッテセンタービル。ハノイは韓国人も多い(写真提供:ハノイリビング・山中肇)
-
-
ハノイの旧市街はまだ高層ビルはほとんどない
-
-
ハノイの新市街で見かけた、片側だけ窓のない建設中のビル
-
-
ホーチミンで見かけた薄っぺらな奇妙な建物
<取材・文/高田胤臣(Twitter ID:
@NaturalNENEAM)>