現職のルセフ大統領の職務解任が早まるとの見方が濃厚に
今回の事情聴取では数時間で解放されたルラ前大統領だが、検察側はこれまでの捜査で、ルラがこの汚職事件で最も利益を享受したひとりであり、また労働者党の選挙キャンペーンに汚職資金が使われたことは確かである睨んでいるという。
そしてこれらの事態は政局にも大きな影響を与えそうだ。政治アナリストの間では、今回のルラの警察による拘束はルセフ大統領の職務解任を早めることになるという見方が広まっている。しかも、それを背後から後押しするかのように2015年のGDPがマイナス3.8%だったことが公式発表された。さらに2016年のGDPも3.45%のマイナス成長が予測されているという。2年続けてマイナス成長になるのは1930年以来経験したことがない中で、この経済の衰退はブラジル経済にとって最悪の事態となる可能性がある。(参照「
in folatam」)。
ルセフ大統領は、解任される前に辞任し、年内に大統領選挙が実施される可能性が強いように思われる。
<文/白石和幸 photo by
Ricardo Stuckert/PR・Agência Brasil(CC BY 3.0 BR)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。