同性パートナーの保険金受け取りに公的証明書は不要――ライフネット生命の対応拡大の理由

カップル 昨年、広告代理店の電通が行った性に関する調査によると、全体の7.6%が同性愛や心身の性が一致しない、「LGBT」と呼ばれる性的少数者だったという。LGBTの実数についてはたびたび議論となってきたが、渋谷区が昨年11月5日、同性カップルに「パートナーシップ証明書」の交付を開始したことで、大きな注目を集めた。  同証明書は、昨年4月に渋谷区議会で可決された「男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例」に基づいて交付される。法的な拘束力はないものの、婚姻関係に相当すると認められた同性カップルに対し異性のケースと同等に対応するよう、区内の公共団体や事業者に促すというもの。当事者からは制度的な後ろ盾として評価され、実際に一部カップルが交付を受けた。  LGBTの人権に注目が集まる中、渋谷区で証明書交付が開始される前日の11月4日、ライフネット生命保険が「死亡保険金の受取人指定を同性パートナーにも拡大」した。これまで「原則として、戸籍上の配偶者か、2親等以内の血族」とされていた運用条件が拡大されたことになる。その後、第一生命保険なども「自治体の証明書の提示で同性パートナーを受取人に指定可能」と発表。またたく間に生保業界では「同性パートナー受け入れ」の機運が広まった。生保業界では異性間における事実婚のパートナーを受取人として認める動きが加速していたが、このタイミングで対応を決めたライフネット生命保険に話を聞いた。 「もともと当社では、異性間における事実婚のパートナーについては死亡保険金の受取人として指定可能としていました。数年前に、同性のパートナーにも指定を拡大できないかと考え、有志による『ダイバーシティチーム』を立ち上げてリサーチを開始。その後、社内での本格的な検討がはじまり、昨年10月29日に受取人の拡大を発表することができました。」(ライフネット生命保険広報担当)  発表後、ライフネット生命保険には多くの問い合わせがあり、受付開始日以降には実際に数十件の契約申し込みがあったという。  実はこれまでも、同性パートナーを受取人に希望するケースは少なからずあったが、各保険会社が「原則」を弾力的に解釈し、個別に判断してきた。ただし、その解釈の基準はまちまちで、対応自体も知られていなかったため、同性婚カップルの多くがパートナーを受取人にすることを諦め、自分の両親などを受取人に指定してきたのが実情だった。
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