同胞だからと油断禁物。「日本人を狙う日本人詐欺師」がタイで増加

詐欺業者のせいで不法就労!?

タイ警察の本部

 近年であった大きな日本人の詐欺事件では、会社や飲食店経営者のビザや労働許可証、月々の会計報告まで引き受けていた会計事務所を経営する男が、実はなにもしていなかったために何百人という日本人が被害に遭った。正式に働いていると思っていたら不法就労だったのだからたまらない。彼は最終的にタイの大手銀行からも金を騙し取ったとして、さすがに警察も動いて逮捕となった。  高額の詐欺はそう頻繁に起こるものではない。しかし、せいぜい数万円から数十万円程度の少額の詐欺はそれこそ掃いて捨てるほど発生している。  日本においても詐欺事件は証拠固めが困難で、立件するためにときには数年もかかる。タイでも少額であると立証しづらい上、どうせ外国人同士の揉めごとなのだからと警察もなかなか動いてくれない。そのため、日本人の少額詐欺事件は毎日たくさん起こっているにも関わらず、ほとんどは表に出てこないし、詐欺師も堂々と暮らしているほどである。  筆者もそれと知らずにつき合いのあったタイ在住者の中で3人も詐欺をしていた人がいたし、別にいるもう1人は限りなく黒に近い。この4人のうち2人はいまだタイ国内で暮らしていることが確認できている。

「海外で暮らす同胞だから」では足を掬われる

旅行で来た日本人がなにかトラブルに見舞われたときに世話になるのはツーリストポリスだ。ホットラインには日本語ができる人が待機している

 タイは住みやすい国だ。年々近代化すると共に、幸運にも和食ブームで、親日家も多い。この数年でクーデターが起きたり、洪水が発生してきたにも関わらず在留邦人は増加の一途を辿る。タイは殺人事件の発生件数が人口比では日本の数十倍にもなるというが、一般的な生活圏内で普通に暮らしている分には危ない目にも遭うことはない。タイ人もこちらから刺激しない限りは悪人だっておおらかなほどである。  しかし、気をつけたいのは本来なら信頼し合っていくべき日本人となっている。日本社会の縮図がバンコクの日本人社会であり、海外に暮らす同胞だから助けあうのは当然、という至極普通の考え方は逆に足をすくわれてしまう。これがバンコクの現実なのだ。 <取材・文・撮影/高田胤臣(Twitter ID:@NaturalNENEAM)>
(Twitter ID:@NatureNENEAM) たかだたねおみ●タイ在住のライター。最新刊に『亜細亜熱帯怪談』(高田胤臣著・丸山ゴンザレス監修・晶文社)がある。他に『バンコクアソビ』(イースト・プレス)など
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