目指すはディズニーランド?エンタテイメント性を持つ家具屋(Place)
イケアの広大な店舗は基本的に①テーマ別モデルルーム②収納やテーブル等の商品別エリア③組み立て家具の倉庫といったエリアによって構成されています。①で家具の使用イメージを見て②で比較検討、気に入ったら③でピックアップしてレジで精算という流れですね。
しかし、それに加えて④レストラン⑤託児施設といった施設も用意して、ただの家具小売店に行く感覚ではなく「いつも新しい空間や心踊る商品がある」「家族のレジャー施設として楽しめる」といった店舗作りがなされています。ビストロで出すホットドッグも人気です。
特に買いたいものが無くても、家族でとりあえず休みに行けば、結構長い時間を楽しく過ごせる、で気付いたら何がしか気になる商品があって買ってた、みたいなのが理想でしょうか。年間の来場者数は2000万人を超え、会員制度「IKEA FAMILY」も500万人を突破、とディズニーランド・シーの来場者数が3000万人であることを考えれば、既に一大テーマパークの規模といえますね。
このように独自モデルを展開するイケアですが、実は1974年に一度、三井物産や東急百貨店と合弁で日本に進出して2店舗を展開したものの、1986年に撤退した経緯があります。当時はバブル期であり、大規模な店舗は確保しづらい上、自分で組み立てる安価な商品が受け入れられる市場環境でもありませんでした。
しかし、撤退から20年が経った2006年、地価が下落し、長いデフレ経済に入ったタイミングで、今回はイケアの全額出資で再進出、今回は順調に本来のイケアモデルで
売上を順調に伸ばしています。これまで、日本では4地域8店舗を展開していましたが、2020年には14店舗、売上1500億円の経営目標も掲げています。
第14期決算公告 2月18日官報96頁より
売上高:780億8400万円
経常利益:6億4400万円
当期純利益:3億400万円
利益剰余金:4億3000万円
過去の決算情報
詳しくは
こちら http://nokizal.com/company/show/id/1571979#flst
また、昨年秋には熊本に従来よりも小型の店舗を開店したり、パートタイマーの全正社員化を進めるなど、新規投資にも余念がありません。ところで、決算を見ると直近の利益率は大幅に低下してきていますね、普通ならかなりまずい状況のようにも見えますが、再進出後10年で積み上げた規模を5年で倍にする、という上記の計画なので、Amazonの様にキャッシュフローの中から積極的に投資しているのでしょうか。
ただ、以前からイケアの会計方式は「スウェーデンのシンプルライフ」を提供するという、割と素朴で朴訥したブランドイメージからは想像しづらい、オランダの財団を利用したかなり強かな方式を取っている(和訳)ので、そこら辺りも何らか関係しているのかもしれません。別に合法なので問題ないですが、そりゃ売上4兆円の世界的オーナー型非上場企業がシンプルに、とはいかないでしょうね(笑)
最後に、イケア・ジャパンの1号店は船橋店ですが、かつて400億円を投じ、1993年から2002年まで営業を行っていた全長500mにして、史上最大の屋内スキー場「ららぽーとスキードームSSAWS」の跡地に建っています。ちなみにその前は懐かしの巨大迷路施設「ランズボローメイズららぽーと迷路」です。上記のバブル期とイケアの組み合わせと併せて、考えてみると結構感慨深いですね。
決算数字の留意事項
基本的に、当期純利益はその期の最終的な損益を、利益剰余金はその期までの累積黒字額or赤字額を示しています。ただし、当期純利益だけでは広告や設備等への投資状況や突発的な損益発生等の個別状況までは把握できないことがあります。また、利益剰余金に関しても、資本金に組み入れることも可能なので、それが少ないorマイナス=良くない状況、とはならないケースもありますので、企業の経営状況の判断基準の一つとしてご利用下さい。
<写真/
Dick Thomas Johnson>
【平野健児(ひらのけんじ)】
1980年京都生まれ、神戸大学文学部日本史科卒。新卒でWeb広告営業を経験後、Webを中心とした新規事業の立ち上げ請負業務で独立。WebサイトM&Aの『
SiteStock』や無料家計簿アプリ『
ReceReco』他、多数の新規事業の立ち上げ、運営に携わる。現在は株式会社Plainworksを創業、全国の企業情報(全上場企業3600社、非上場企業25000社以上の業績情報含む)を無料&会員登録不要で提供する、ビジネスマンや就活生向けのカジュアルな企業情報ダッシュボードアプリ『
NOKIZAL(ノキザル)』を立ち上げ、運営中。