超強気の『週刊ポスト』VS弱気の『週刊現代』報道から読む日本株のシグナル
2016.02.29
毎週月曜日発売の2誌の経済記事が妙に面白い。片や日経平均「2万5000円」(週刊ポスト)、こなた「1万3000円」(週刊現代)と真逆なのだ。そんな2誌の正しい読み方を伝授!
「年始からの相場を見れば、どっちが正しかったか一目瞭然だけど、2つ並べられると読み比べたくなるよね(笑)」
中堅証券会社のエコノミストがこう評すのは『週刊ポスト』(小学館)と『週刊現代』(講談社)のこと。実は、年始からこの2誌の経済記事は特にエッジが効いている。2月半ばまでに、表紙のトップを飾った大見出しを記事末に一覧にした。一覧には記していないが、2月15日発売の両誌も方向性は真逆。表紙のど真ん中という定位置からは追いやられたものの、ポスト2/26号では「『日経平均2万5000円』を託された有名企業新社長16人の『運』と『実力』」という特集を掲載。現代2/27号は「マイナス金利、大失敗」といった具合なのだ。 なぜ、こんな対照的な大見出しが躍っているのか?週刊現代編集部の記者は「ウチは昨年11月の時点で『日本でいちばん早い2016年〈景気と経済〉大予測』という特集を組んで、来年は日経平均1万5000円を割ると予想していた。その予想通りの相場となっているだけ」と意気揚々。一方の週刊ポスト編集部記者は「最近は毎日のように、『全然当たらないじゃないか!』とお叱りの電話があります」と、意気消沈気味。
「『日本経済は絶好調』という特集を載せた新春号の実売部数が、何年かぶりに週刊現代を超えたんです。それに気を良くして、『株は上がる』と言い続けてきましたが、相場はご覧のとおり……。今も日経平均2万5000円は到達できない水準だとは思っていませんが、単なる煽り記事とは思われたくないので、トップに記事を掲載する回数は減っていきそうな状況です」
では、情報収集力に長けた投資家たちは両誌をどう見ているのか?元外銀チーフトレーダーで、現在は個人トレーダーとして独自の相場分析記事を有料メルマガ等で配信している西原宏一氏が話す。
「私も相場に関してコメントを求められることがありますが、実は強気と弱気、どちらのロジックでも相場を解説することは可能です。だから、ポストを読んでも、納得できる面もある。問題は、その一つの主張を鵜呑みにしないこと。仮に現代の記事を読んで日経平均は下がると予想して先物を売って稼いでいる人がいるとしましょう。そういう人こそ、ポストを読んでみるべき。人間は不利な情報から目を背けてしまいがちだから。むしろ、不利な情報を収集してリスク管理に役立てるべきなのです」
資産2億3000万円の個人投資家、www9945氏も次のように話す。
「マクロ経済分析に関しては現代の圧勝ですが、相場に対して弱気なため、個別銘柄に言及する機会は少ない。面白い銘柄を発掘したい投資家にとっては、その点が物足りなかったりするのです。だから、私はポスト2/12号を見て、高配当銘柄として紹介されたあおぞら銀行を暴落時に買いました」
どちらに乗るかそるかでなく、ものは使いようというわけ。実際、数多のメディアをチェックしていけば、相場転換のシグナルを見つけ出すこともできるという。
「相場が好調なときは、いろんな出版社が『“億り人”の稼ぎ方』みたいな特集を組みますが、私はこれを相場が天井をつけたシグナルと見ています。相場が良ければ誰でも稼げるもの。そのなかで億単位の資産を株で築く人がポンポン出てくるっていうのは、それだけで相場の過熱感を示しているからです。逆に、相場が低調なときはポストのような、強気のメディアを注視する。ずっとトップにあった『日経平均2万5000円』といった強気の見出しが表紙の隅っこのほうに追いやられだしたら、底打ちのシグナル。『強気のメディアも強気でいられなくなるほど下げた』ので下げは一服と見ることができるんです」
西原氏もメディアの見出しの打ち方で転換点が見えてくると話す。
「大手経済誌が世界同時株安とかチャイナショックといった読者の恐怖を煽るような企画を打ち出してくると、底打ちとなる印象。メディアの論調は多様であってしかるべき。逆にいえば、大半のメディアの論調が一致してしまうようなときは、相場の転換シグナルとなりやすいのです」
冒頭に登場した中堅証券会社エコノミストも「バブル期には女性誌までもが“儲かる株特集”をやったところ、そこが天井になった」と話す。今回に当てはめれば、女性誌が「日本経済崩壊」といった特集を組んだら、“そこが底”っていうこと。ちなみに、西原氏は今年の相場に対して弱気予想で、www9945氏は中立予想。これに乗っかってHBOも「日経平均1万4000円割れへ!」なんて言いだしたら……底打ちのサインになったりして……。
超強気の『週刊ポスト』VS弱気の『週刊現代』
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