「泊まれる本屋」、オープン3か月で連日稼働率ほぼ100%の理由

「好きなものに没頭しながら寝られる」

 2020年に東京オリンピックを控える今の日本では、国内外の観光客の増加も相まって宿泊施設不足が危ぶまれている。そんな中、都内を中心に不動産物件の紹介をしているR-STORE(アールストア)は、宿泊施設「BOOK AND BED TOKYO」を2015年11月にオープン。開店初日から、連日ほぼ100%の稼動率という人気ぶりである。  同店は“泊まれる本屋”との愛称で知られている。とはいえ、実際には書籍の販売は行なっておらず、常設されている約2000冊の書籍を自由に手に取って読めるホステルだ。ビルの1フロアを利用した、30床1間の宿泊施設として生まれ、日本国内はもちろん海外メディアからも注目されている。 「宿泊事業においてまだどこの企業もアプローチできていないポイントに訴求できる確信がありました」と語るのは、同店の代表取締役・淺井佳氏。この確信がなければ、そもそも宿泊事業に参入していなかったという。 「寝るという行為にスポットを当てた宿泊施設は、今までになかったと思います。だからこそ当店では、何か好きなものに没頭しながら眠るという“幸せな寝落ち体験”を提供することをコンセプトにし、積極的に泊まりに行きたくなる空間づくりを目指しました。そのためのツールとして本を組み合わせたので、実のところ本自体はあまり重要ではないんですよ」(淺井氏)  だれもが泊まりに行きたいと思うであろう5つ星ホテルのように、寝具やアメニティが充実していればたしかに居心地はよいが、高額なため一般の客はなかなか利用できない。また、そういった施設への投資は、寝る行為そのものに訴求できていないと淺井氏は考えている。「体験を提供する空間」というコンセプトは、そうして導き出された。そのため、1泊の宿泊費は平日で3500円~4500円、金・土・祝前日は4500円~5500円(税抜)と抑えめだ。
次のページ
勝因は女性のニーズとインバウンド
1
2
3
バナー 日本を壊した安倍政権
新着記事

ハーバービジネスオンライン編集部からのお知らせ

政治・経済

コロナ禍でむしろ沁みる「全員悪人」の祭典。映画『ジェントルメン』の魅力

カルチャー・スポーツ

頻発する「検索汚染」とキーワードによる検索の限界

社会

ロンドン再封鎖16週目。最終回・英国社会は「新たな段階」に。<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

国際

仮想通貨は“仮想”な存在なのか? 拡大する現実世界への影響

政治・経済

漫画『進撃の巨人』で政治のエッセンスを。 良質なエンターテイメントは「政治離れ」の処方箋

カルチャー・スポーツ

上司の「応援」なんて部下には響かない!? 今すぐ職場に導入するべきモチベーションアップの方法

社会

64bitへのWindowsの流れ。そして、32bit版Windowsの終焉

社会

再び訪れる「就職氷河期」。縁故優遇政権を終わらせるのは今

政治・経済

微表情研究の世界的権威に聞いた、AI表情分析技術の展望

社会

PDFの生みの親、チャールズ・ゲシキ氏死去。その技術と歴史を振り返る

社会

新年度で登場した「どうしてもソリが合わない同僚」と付き合う方法

社会

マンガでわかる「ウイルスの変異」ってなに?

社会

アンソニー・ホプキンスのオスカー受賞は「番狂わせ」なんかじゃない! 映画『ファーザー』のここが凄い

カルチャー・スポーツ

ネットで話題の「陰謀論チャート」を徹底解説&日本語訳してみた

社会

ロンドン再封鎖15週目。肥満やペットに現れ出したニューノーマル社会の歪み<入江敦彦の『足止め喰らい日記』嫌々乍らReturns>

社会

「ケーキの出前」に「高級ブランドのサブスク」も――コロナ禍のなか「進化」する百貨店

政治・経済

「高度外国人材」という言葉に潜む欺瞞と、日本が搾取し依存する圧倒的多数の外国人労働者の実像とは?

社会