お金の教養その3:お金が殖やせる情勢にあるかどうかということよく見る
執務室の書棚にはさまざまな本が並ぶ
しかし、仕事をしているだけではつまらない。貯蓄や利殖も考えたいではないか。
「
『72のルール』をまずは知っていればいいと思います。『72のルール』とは、
72÷金利もしくは成長率=元本が倍に成る年数というルールです」
この『72のルール』は、元本が2倍になるような年利と年数とが簡易に求められる計算式としてあちこちで見かける。出口氏はこの「72のルール」で世の中を観察せよ、という。
「僕がサラリーマンになった70年代は、長期の金利は8%だったんですよ。『ゴールデンエイト』などと言われていました。金利が8%を切ることはないと。何年で倍になるか分かりますか?」
72÷8=9。9年で倍になる計算だ。なんとも羨ましい。
「先日ついに長期金利は、0.195%まで下がりました(注:インタビューは1月26日に実施)。ということは、『72のルール』で計算すると、倍になるのに何年ですか?」
72÷0.195=369.23資産が倍になるのに370年もかかる。370年前といえば1646年。徳川家光の時代だ。家光は5年後の1651年に亡くなるから、彼の遺産でさえまだ倍に達していない計算だ!(ちなみに、5日に一時0.025%という過去最低を更新したが、こうなると倍になるのに2880年もかかる……)
「今の世の中は、基本的にお金が殖えにくい世の中なのです。こうしたファクトをふまえると、では一番いいのは何かといえば、この金利だったら、お金を貯めこむより
自分の健康に留意して自分でいつまでも働くのが一番賢いということがわかるはずです」
確かに言われてみればそうだ。こんな低金利の時代に、老後の資産を貯めこんだりしてもあまり意味はない。
「お金が殖やせる情勢にあるかどうかということをよく見ることが最後に重要になってくるのです」
世に出回る扇情的な情報に振り回されて将来に不安を募らせたり、「仕事にも慣れたからいっちょここらで投資でも始めるか」と山っ気を出しかけたら、この3つの「教養」を思い出してみてはいかがだろうか?
出口治明(でぐちはるあき)●ライフネット生命保険株式会社代表取締役会長兼CEO。1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職
<取材・文/菅野完(Twitter ID:
@noiehoie)>