次世代自販機がマーケットを大きく変える!?

 JRの駅などでデジタルサイネージ式の自動販売機を見かける機会が増えた。デジタルサイネージとは、液晶画面に表示されるタッチパネルで操作し、商品説明ムービーや音声を含む情報を発信する電子看板を指す。だが、デジタルサイネージ自動販売機=飲料自販機+電子看板という単純なものではない。内蔵したARカメラには顔認識機能があり、利用した人物の顔から年齢・性別などをデータ化、顧客情報をマーケティングにも活用しているという。 「収集したデータからエリアごとの顧客のニーズを分析し、商品の配列を変えています。インターネットと接続しているため自販機自体が位置情報を認識し、リアルタイムで各地のイベントや飲食店の地域情報などを表示します。コンテンツの自由度が高いことも次世代自販機の特徴でしょう」(株式会社ブイシンク・代表取締役・井部孝也氏)

ブイシンク井部孝也代表取締役

 全国に設置されている自動販売機は約250万台。そのうちデジタルサイネージ式のものは約1200台だが、導入されているのは首都圏の駅のホームなどごく一部。ブイシンクの製品は、大型商業施設を中心に全国に約700台が設置されている。同社の新型機「スマートベンダー」には遅延や事故といった運行情報、天気予報の表示、ニュースの配信機能などもある。搭載された機能は15種類にも及ぶ。 「ARカメラを使って背景合成とキャラクター変身ができるAR記念写真機能も搭載しています。地域や観光地の特徴的な場面を背景にした、“なりきり写真”を撮ることができます。LINEのAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)サービス「LINEビジネスコネクト」とも連携していて、撮った画像は表示されるQRコードから撮影者のスマートフォンにLINE経由で送ることができます。日本を代表する文化を背景にキャラクターに変身する機能は、エンターテイメントとして楽しめますし、インバウンド向けコンテンツとしても内容を想定しています」  同社オフィスで、AR記念写真を実際に体験させてもらった。撮影のボタンを押してスマートベンダーから2~3mほど離れると、前に立つ人物とオフィス内の映像がパネルに映った。画像上のフロアに出ている円形の印に乗ると、服や髪の辺りに着物や鎧、兜などの画像が出現、武者姿や振り袖姿に変身する。背景は江戸城をイメージしたものに変わった。 ⇒【画像】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=81742

筐体内のカメラで取り込んだ顔を画面上で合成。"ハメ具合"も確認できる

「弊社のAR記念写真機能は、人物の映像の上に出てくる鎧や兜などの画像が、人の動きと呼応することが特徴です。また、顔認識機能はセキュリティ対策にも応用が可能です。例えば、災害時に自分の家族と連絡が取れなくなったケースでは、被災した関係者が確認したい人の写真をネット経由で登録すれば本人が自販機の前に来ると顔認識機能が起動。生存確認ができます。近年懸念されているテロ対策にも活用可能で、テロリストの情報を事前に登録しておけば、カメラが感知できる範囲に情報と適合する人間が通ると、指定された端末にアラートを飛ばす機能もあります」

画面上で操作できる機能が変えられるのも利点

 またインバウンド向けに開発されたサービスに、多国語対応機能がある。スマートベンダーは日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語で、イベント情報や運行情報を表示する。今後は各国の言語で音声対応する、会話型にしていくという。  自動販売機の設置場所はすでに飽和状態という印象だが、今後どのようにサイネージ式自動販売機を展開していくのだろうか? 「今までの自動販売機は景観デザイン上、ひと目につきにくいトイレの脇やエレベーターの横などに置かれていることが多かったんです。しかし広告表示やコミュニケーション機能があるデジタルサイネージ式は、むしろメイン動線に出てくるのが自然。いままでとは設置場所の概念が変わってきますし、当然表に出てくれば、飲料の売り上げも上がります。そもそもスマートベンダーの開発は、地域の生活に役立つネットワーク情報端末としてスタートしたプロジェクト。人が集まるところに設置してこそ、意味があります」  政府が行った産業競争力会議では、デジタルサイネージ自動販売機を含むIoTやビッグデータといった日本の最先端技術が、海外へのショーケースとなると発表している。2020年東京オリンピックの頃、街にある自販機の風景はどうなっているのだろうか。<取材・文/石水典子
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