すき家の求人ページより。笑顔で働く自信があるクルーはどれだけいるか?
すき家(ゼンショー)のバイトのシフトに穴が空きまくりで営業できない、時給を上げても応募がない、営業停止の末に閉店……そんな事態が起きている。すき家で働くのはどれだけ大変なのか、元バイト(クルーと呼ばれる)たちに聞いてみた。
「すき家のウリでもあるのですが、とにかくメニューが多すぎ。カウンターで一人が頼むのならいいけど、家族連れでにぎわう時間が特に辛い。みんなバラバラに頼むんですよね。牛丼だけでも大変なのにやきとり丼や海鮮丼といった変わり丼もあるし、カレーも……。本当にテンパるんですよね」(27歳・元クルー男性)
それだけなら昔からのすき家のシステムだ。バイトが一斉にやめる引き金となったのは、牛すき鍋定食の登場だったという(現在は終了)。
「鍋は時間かかる上、ほかのお客さまからどんどんオーダーが入る。配置も気を使うし、あれはバイトがボイコットを起こすのも無理はないですね」(同)
店にもよるが、クルーは最低限の人数が配置される。それでも、接客、提供、片付けとやることが山で、かなりヒィヒィ言わされているようだ。
「おまけにすき家の場合は、他のチェーン店に比べて券売機がない。その作業が減ってくれるだけでどんなに助かるか……。お客さんのなかでもうっかり食べたら会計をせず帰ろうとする人もいるくらいで。こないだ、支払いをせずに出ていったお客さんを追いかけたら『こっちは払うつもりだったんだ』と逆ギレされました。だから下手にお客さんを食い逃げ扱いすることもできず……」(28歳・元クルー男性)
また、兼ねてから問題視されてきているのは深夜の“ワンオペ”だ。ワンオペレーション、つまり一人で店内を回すことである。注文を受けた後、キッチンに入って盛りつけ、そして提供、会計、片付け、そして報告まで全部ひとりでこなす。聞いただけでも大変だ。
「いくら深夜だとしても、集客の山場はある。とあるスクランブル交差点の一角にあるお店だったんですが、終電後、流れるように入ってきたときは地獄を感じました。なかなか提供できずにモタモタしていていると深夜のガラの悪い客から罵声を浴びたり、テンパっていて大変なときに酔っ払い客が食い逃げしたりと、散々な思いをたくさんしてきました。おまけに洗い物は後回し。とうとう食器が足りなくなり、仕方ないので水でささっとゆすいだ食器で提供したりしていました」(25歳・元クルー)
「バイトが穴あきまくりなのでエリア店長が担当店舗のシフトを埋めるしかない。正直家に帰る時間はありません。転勤も多く、引越しをするのですが、荷物をあけないまままた転勤になることも少なくありませんでした」(32歳・元社員)
客として行く分には、満足度の高いすき家だが、中の人間はそれだけ苦労をさせられていた。長年システムは変わらずにいたが、さすがに裏側がこれだけ浮き彫りになった今、働きたいクルーもなかなか出てこないのが現実だ。ゼンショーの今後の対応はいかに? <取材・文/HBO取材班>