日印原子力協定でインドは核大国化するのか?

使用済み核燃料「核兵器転用はない」は本当?

 NPO原子力資料情報室の松久保肇さんは、日本がインドに原発を輸出するリスクを次のように指摘する。 「インドが求めているのは日本の原子力技術です。NPTやCTBTに加盟しないインドに原発を輸出すれば、日本の核不拡散政策が破綻し、インドの核軍拡を助長することになりかねません」  協定締結をめぐっては12月9日、松井一實・広島市長と田上富久・長崎市長が連名で安倍首相と岸田文雄外相に宛ててインドとの交渉の中止を求める要請文を提出した。  この中で「この協定は、核物質や原子力関連技術・資機材の核兵器開発への転用の懸念を生じさせるものであり、広島・長崎の被爆者を始めとする多くの市民が核兵器を廃絶する上での障害となりかねない」と懸念を表明した。  さらに「我が国は、NPT非締約国に対して非核兵器国として早期かつ無条件での加入を要請している立場にありながら、この協定についての交渉を行うならば、自らがNPT体制の空洞化を招くことになりかねません」とも警告している。  メディアは協定締結を「使用済み核燃料を核兵器に転用しないという確約を求めており、こうした確約にめどがたったものとみられる」(NHK、12月12日)などと報じた。  これに対して国際環境NGOのFoE Japanは声明で「(合意の)詳細は現時点では明らかになっていません」と指摘。「原発事故を起こし、多くの被害者が苦しんでいるさなかに、斜陽ビジネスである原子力産業を救済するために他国に原発を輸出し、他国の住民を危険にさらす非倫理性は到底看過できません」と批判した。  昨年11月にインドを訪れた同NGOの満田夏花さんは次のように話している。 「インドは風力、家畜し尿を利用したバイオマスなど、自然エネルギーの潜在力が高い。住民が自ら管理できる分散型エネルギーではなく、原発のような集中型エネルギーの導入に力を入れるのは、核を持ちたいという思惑に加え、政府が住民を支配したいからだとも指摘されています。インドの原発はトラブルが多いのですが、その原因は主に作業員のミスとされ、情報公開制度も核に関するものは除外されているなど多くの問題を抱えています」 <取材・文/斉藤円華>
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