「電力自由化」で、一般家庭も非原発電力会社と契約できる!?
2016年4月から電力の小売り全面自由化が始まり、いよいよ一般家庭でも電力会社を選べるようになる。電力については10電力会社による地域独占が続いてきたが、この制度変更によって「電気代をもっと安くする」という選択肢が増えることだろう。一方で、福島第一原発事故の後から増えている「原発の電気を使わない会社と契約したい!」という希望に応えられる選択肢は増えるのだろうか?
すでに多くの会社が、電話やガスなどとセットに契約すればお得になる料金プランを設定する等、電気代の価格競争が起きることは確実だ。一方で、原発にも火力発電にも頼らない100%再生可能エネルギーから生まれた電力を購入できるようになるかと言えば、まだ不透明な状況だ。では「再エネの普及を応援したい」という家庭向けには、どんな選択肢があるのだろうか?
原発事故以降「原発を使う電力会社との契約を辞めたい」と考える人は、原発再稼動などをめぐるアンケートでも常に反対派が上回っていることから、潜在的にはかなりの数に上るはずだ。しかし、再エネにこだわって電力供給をめざす小売り会社のうち、来年4月の自由化スタート時点で契約できる所は大企業の子会社を除けば少数だ。
その理由には、まだ日本に再エネの発電所が少ないため電源確保が容易ではない事や、国の制度設計が固まらないため準備に時間がかかっていること、そして資金面やノウハウなどで大手に遅れをとっていることなどが挙げられる。
一方で、そうした問題をクリアして2016年度中になんとか再エネを提供できるよう模索する会社もある。再エネ普及をめざす40以上のNPOらがネットワークしている「パワーシフトキャンペーン」では、専用のホームページを設け、そのような企業の情報を公開している。
キャンペーンの事務局を務める吉田明子さん(FoE Japan)は言う。「今は再エネ電力を使いたいと思っても、一般の方が意思表示をする場がありません。ホームページでは、新しい情報を皆さんと共有しながら、そうした声を小売り会社に届けて行ける場にしていくつもりです」。
2015年12月時点では、ホームページで紹介している電力小売り会社は9社。今後その数を増やすとともに情報の内容もバージョンアップしていく予定だ。
また、キャンペーンでは「パワーシフト宣言」を集めている。これはホームページに、「再エネ電力と契約したい」と宣言することで、世の中にそれだけニーズがある事を証明することになる。このような応援の声が高まれば、再エネビジネスは格段にやりやすくなるはずだ。
「各家庭が契約する電力会社を選択できる」という日本の歴史上でも大きな変革期を迎えているものの、だからといって再エネ電力が自動的に増えるわけではない。日本に普及するかどうかは、一人ひとりがどのような選択をするかにかかっている。
<取材・文・写真/高橋真樹 著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)など>
再エネ電力専門の小売り会社にとっては逆風
再生エネ電力を提供する企業の情報を公開
ノンフィクションライター、放送大学非常勤講師。環境・エネルギー問題など持続可能性をテーマに、国内外を精力的に取材。2017年より取材の過程で出会ったエコハウスに暮らし始める。自然エネルギーによるまちづくりを描いたドキュメンタリー映画『おだやかな革命』(渡辺智史監督・2018年公開)ではアドバイザーを務める。著書に『ご当地電力はじめました!』(岩波ジュニア新書)『ぼくの村は壁で囲まれた−パレスチナに生きる子どもたち』(現代書館)。昨年末にはハーバービジネスオンラインeブック選書第1弾として『「寒い住まい」が命を奪う~ヒートショック、高血圧を防ぐには~』を上梓
『ご当地電力はじめました! (岩波ジュニア新書)』 地域の電力は自分たちでつくる! 「おひさまの町」飯田市、上田市の屋根借りソーラー、岐阜県いとしろの小水力、福島県会津地方で発電事業を進める会津電力、東京多摩市で活動する多摩電力、北海道から広がる市民風車。各地でさまざまな工夫をこらして、市民主導の「ご当地電力」が力強く動き出しています。 |
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