昨年末にはルイス・フェルナンド・ペザオ州知事が180日間の公衆衛生の非常事態を宣言した。リオデジャネイロの医師連合会会長のホルヘ・ダルゼ氏は「黙っているわけには行かない。我々の不安は(この不祥事態を前に)死者が出ることだ。そして、医師がその責任を負わされることだ。このような犯罪的な状態を生んだのは政府の責任である」と述べて、医療体制の不備を訴えた。
極度の財政難で公衆衛生の体制に不足のあるリオデジャネイロである故に、オリンピックが8月に開催されることを受けて、同氏は「もしオリンピック開催中に外国からの訪問客が病気になれば、治療するのに困難を生じることになる」と予告して、医師の責任になることを回避しようとした。それが冒頭の一言である。
苦境に立たされるブラジル経済。医療だけではなく、治安を守る警察のパトロールカーのガソリンさえも不足し、現状では十分な治安の安全は確保出来ない可能性すらあるという。
2020年の東京オリンピックもさまざまな問題を抱えているが、それ以前にブラジル五輪も大変なことになりそうだ。
<取材・文/白石和幸 photo by
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しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。