『Under the Dog』の成功に見る日本発プロジェクトの可能性――Kickstarterはインターネットドリーム!?
2014.09.18
ウェアラブルデバイス『Ring』の出荷遅延トラブルなど、支援者の期待を裏切るプロジェクトもあった。サービスの利用者が増えれば、出資を募る側にはよりシビアな計画性が求められ、出資する側も、目利き力とリスク管理が問われるようになる。
他方でKickstarterというシステムが作品そのものに影響を与える可能性もある。サブカルチャーに造詣の深い明治大学国際日本学部の森川准教授は、「Kickstarterで資金がまかなわれるということは、日本のアニメファンではなく、良くも悪くも主にアメリカのクラウドファンディングでお金を投じてくれるタイプの人たちの趣味や関心に焦点を合わせて作品が作られるということ。結果としてそれまでにない趣向の作品が生まれる可能性も高い」と新たなクリエイティブの誕生に期待を寄せる。
Kickstarter発の成功例も増えてきた。2012年に約550万円の投資を受けて製作された映画『イノセンテ』(原題: Inocente)は、今年2月のアカデミー賞で短編ドキュメンタリー賞を受賞した。
現在ではクラウドファンディング発の製作物やサービスというだけで話題になりやすいが、それだけではない。新しいシステムはクリエイティブの現場にまで影響を与えうる。今後どんなプロジェクトが生まれるのか。Kickstarter発の展開、要注目だ。
※【動画】『Under the Dog』Trailer http://www.youtube.com/watch?v=EkN4apus2gA
<取材・文/石田 恒二>
9月8日、日本のアニメ作品『Under the Dog』が、米国発のクラウドファンディングサイト「Kickstarter」にて、1万2157人からアニメ部門最高額となる約87万8千ドル(約9200万円)の資金調達に成功した。Kickstarterでは過去に、アニメ制作会社TRIGGERやカプコンの人気ゲームシリーズ「ロックマン」を手がけた稲船敬二氏なども資金調達を行なっている。アメリカンドリームならぬ、インターネットドリームをかなえるKickstarterとは一体何なのか?
Kickstarterでは、2009年のサービス開始以来、約6万9000のプロジェクトに対して延べ10億ドル以上の出資が行われている。日本でも、同様のサービスにCAMPFIREなどがあるが、最高投資額は約1100万円。かたやKickstarterの過去最高額は約12億円と文字通りケタ違いだ。
プロジェクトは芸術や音楽、ファッション、テクノロジーなど15のカテゴリで膨大な数のプレゼンテーションが更新され続けている。出資者へのリターンは、誓約(Pledge)という形で、出資額に応じてそれぞれ設定される。前述したTRIGGERは1万ドル以上の出資者へスタジオ見学と制作スタッフとのディナーの権利を提供した。
アメリカ本国では、日常的なプロジェクトの支援からクリエイティブなコンテンツの制作まで、プレゼンテーションは多岐にわたる。2013年もKickstarterを通じて様々なサービス・プロジェクトが実現した。女の子対象のエンジニア育成おもちゃセット、長編小説『白鯨』(1851年刊行)を日本の絵文字に翻訳するプロジェクト、さらには学校の生徒が輸送コンテナで教室を建てるプロジェクトなど、そのすそ野は広い。
ただし課題もある。指輪型のハッシュタグ